「ネイマール騒動」で会長が辞任。今、バルセロナで何が起こっているのか? (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko photo by Rafa Huerta

 これまでにクラブが明かした内容によれば、N&N社(父親ネイマール・ダ・シルバとナディンの所有会社)へ4000万ユーロ、サントスへの支払いが1710万ユーロ、代理人への手数料2700万ユーロ、契約金1000万ユーロ(数字はバルセロナの公式サイト発表による)が派生している。これら一連の情報は、選手側との守秘義務によって公にしていなかったというのがクラブ側の説明だ。

 クラブとしては、潔白を証明するために、最終的にネイマールの契約内容を明かすハメに陥ったわけだが、クラブ側は「選手の契約内容を明かすのは、これが最初で最後」と断言した。

 今回の騒ぎに、バルサトップチーム監督のヘラルド・マルティノは、「選手の契約内容が明かされるなんて、こんな状況は過去に経験したことがない」と長いプロ人生の中で、初めての出来事に遭遇したことを明かし、「これがバルサにとって良き結果となることを願っている」と付け加えた。また、ネイマールがサントスからバルサに来ることに陰で尽力していたダニ・アウベス(ブラジル代表)は、「金額を明かすなんて、それは選手に対する敬意の欠如だ」とコメントしている。

 この一連の騒ぎを受けて、とうとう代理人であるネイマールの父親も口を開いた。いわく「私はネイマールがサントスを出る前に、4000万ユーロを(バルサから)受け取った。他にももっと良いオファーを出してきたクラブはあったが、2014年6月までにはバルサに移籍することを確約するためのものだった」と説明。

 そして、「今回、ネイマールファミリーの名前を守るために、契約内容を明かしてくれと私の方からバルトメウ会長に頼んだ」と語り、それは「ネイマールがこういった騒音に関係なく、落ち着いてブラジルワールドカップに行くための、父親としての思いやりだ」と訴えた。

 ちなみに、移籍に詳しいスペイン人のある代理人に聞いたところ、今回のような契約は「腐るほどあるケースだ」と断言していた。

 今回、「バルセロナがネイマールと契約を交わした内容に不正があるのでは」という訴えが、すぐに法廷で裁かれる方向で進んでいったのだが(現在は告訴が取り下げられる方向)、それがあまりにもスムーズだったのは、レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長の存在があるのでは、という見方もある。

 実際、一部ラジオメディアが、ペレス会長は現スペイン政府とのパイプが強固であり、その政治力を利用したと報じた。つまり、現在バルサが支払っている年俸のほぼ倍額(5年間で推定1億500万ユーロ)を提示したにも関わらず、ネイマール獲得が叶わなかったため、それを根にもっているペレス会長が、サンドロ・ロセイ失脚を企んだということだ。

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