ケルン入団の長澤和輝。ドイツ人は日本の大学サッカー選手をどう見たか (3ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou/AFLO

 また、ボールを要求してパスを受ける。そんな何気ないプレイも、チームに加わった当初は当たり前ではなかった。

「最初は周りの選手も全然パスをくれませんでした。『こいつに出してもなぁ』というのはあったと思います。だけど、『こいつはボールを運べるな』という認識がチームメイトに芽生えたのか分からないですけど、少しずつ自分の場所にボールが回ってくるようにはなりました。最後の方は信じて出してくれたので、それはうれしかったですね」(長澤)

 いつの間にかゲームは長澤を中心に回るようになり、後ろに相手を背負っていても、長澤がボールを受けに行くとチームメイトはボールを預けるようになった。

 その様子を見ていた熱心な男性ファンから「あの選手は誰なんだ?」と声を掛けられた。「日本の大学から練習参加に来ている選手だ」と伝えると、「大学生?ということはプロじゃないんだよな?」と不思議そうな顔をしている。「プロではないがJリーグでプレイした経験はある」と教えると、いくつかのJクラブの名を挙げて尋ねてくる。日本のサッカーについても少し知っているようだ。

「非常にいい選手だ。ウチに入るのかい? いくらなんだ?」

 彼の関心は長澤が加入するのかという話題に移った。「プロ契約をしていないから移籍金(契約解除金)はかからない」と教えると、「日本には大学にもこんないい選手がいて、しかも移籍金がかからないのか!」と目を見開いている。セレッソ大阪との契約が切れた香川真司の獲得に、ドルトムントが費やした35万ユーロ(育成費。当時のレートで約4500万円)でさえ格安と言われたが、プロ契約をしていない長澤の場合は本当にタダ同然(出身校の専修大と八千代高校に若干のトレーニング費用が支払われる)なのだ。彼が驚くのも無理はなかった。

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