遠藤航がクロップ監督をも魅了するマネジメント術 身体的アドバンテージがなかったからこそ培った論理的思考 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【3バックの一角で】

「責任感と度胸」

 それを象徴するプロとしての黎明期と言える。

 ポジションは3バックの一角だった。180センチに足りない身長だったが、落下地点の見極めが早く、跳躍も高いため、高さは弱点になっていない。また、球際に強く、腰が強く体幹が鍛えられ、倒れない安定感があった。

 身体的アドバンテージがなかったからこそ、究極的な論理思考の持ち主になったのかもしれない。

 敵、味方、自分と、戦況の流れを読んでいた。常にギリギリのアクションのなか、持ち味としたインターセプトを狙った。ボールを奪いに行く執着はやや激しすぎる面もあって、食いつきすぎたり、背後を走られたり、失敗も繰り返した。しかし、それでもめげずにトライし続け、最大限のリーチに到達し、それを伸ばしている。

 質実剛健なキャラクターである一方、挑戦的な野心もあり、それが彼を地味な守備者に収まらせなかった。

 テクニカルなプレーヤーではなかったが、劣勢を跳ね返すため、自らが果敢にボールを持って攻め上がった。敵ボールを奪ったら、ゴールへ最短距離のパスを狙い、サイドチェンジでプレーを好転させた。精度の低さからミスも少なくなかったが、3バックの右を担当した時は中盤まで上がる機会も多く、失敗を恐れずにチームのために体を張った。

 とは言え、華やかなキャリアではない。

 2013年に昇格したJ1ではケガで長期離脱し、2014年は再びJ2に降格、2015年には昇格したJ1で戦っている。湘南時代の主戦場はJ2だった。しかし昇格・降格の渦中にいたからこそ、非力なチームの総力をどう高めるかを考え尽くしたのだろう。

 2016年から2年半を過ごした浦和レッズでも、ポジションは3バックの一角だった。

 J1ではセンターバックとして、高さにもスピードにも十分、対応できた。サガン鳥栖戦では高さを武器にする豊田陽平とやり合い、ヴァンフォーレ甲府戦では伊東純也のスピードの優位を出させなかった。ロジカルなポジショニングや判断を重ね、不利に立ってない。ただし、90分のなかでは単純な高さやスピードに劣勢になることもあり、「良」だが「優」のプレーヤーではなかった。その結果、Jリーグでは一度もベストイレブンを受賞していない。

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