三笘薫はスタメンを確保した瞬間、欧州へ フェイントのキレは何倍も鋭くなった (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【頭脳的なプレーヤーになってきた】

 したがってウイングは、ロベルト・デ・ゼルビ監督が標榜する攻撃的サッカーには欠かせないパーツになる。三笘との相性は抜群によかった。三苫にボールが渡った瞬間、ブライトンらしさは全開になる。三笘にボールが回ってくる頻度は、それまで所属したどのチームより高い。

 一番に狙うのは縦勝負だ。相手のサイドバックと対峙した際に、後ろ足となる右足のインサイドで、ボールを押し出しながら、タイミングのズレを狙う。十八番は、内に行くと見せかけて縦に出るフェイントで、キレは川崎時代より何倍も鋭くなっている。1試合に1、2度決まるそのアクションは、もはや芸術の域にある。三笘ほど相手の逆を完璧に突き、縦に抜いて出る技巧を持った選手はいない。三笘が相手SBと向かい合う姿は、お金を払いたくなる見せ場となっている。

 ドリブル&フェイントのキレに加え、中盤的なセンスも身につけている。周囲と絡む能力は大幅にアップした。大外で構えるゲームメーカー。サイドアタッカーと言うより、横崩しの主役だ。冷静沈着。サイドからゴールを逆算する頭脳的な賢いプレーヤーになってきた。

 川崎時代の三笘より、エリアをカバーする概念が増している。左ウイングという持ち場を長時間空けることはまずない。デ・ゼルビ監督のもと、ボールを奪われることを想定しながら、賢く攻めながら守ることができる戦術的選手に変貌を遂げていった。腰のケガが長期に及ばないことを祈りたい。

プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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