三笘薫はスタメンを確保した瞬間、欧州へ フェイントのキレは何倍も鋭くなった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【代表、ベルギーではウイングバック】

 五輪代表チーム(本大会ではU-24日本代表)は、東京五輪本番直前までウイングのいない3-4-2-1で戦っていた。三笘の適性にマッチした布陣ではなかった。森保一監督との相性は悪かった。五輪本番(2021年8月)でさえ、三笘はアタッカーのなかで最も出場機会が少ない選手だった。

 A代表に初めて招集されたのは2021年11月だ。ということは、川崎時代は五輪代表チームにもA代表にも招集されなかったことになる。欧州組になって初めて三笘は価値を認められることになったわけだ。

 2022年11月に開催されたカタールW杯本番でも、三笘に対する森保監督の評価は高いとは言えなかった。4試合いずれも交代出場に終わっている。森保監督はそうなった理由について、三笘がコンディションの悪い状態で合流してきたことを挙げた。だが、それまでの経緯を見れば、それが主たる理由には思えない。

 そしてカタールW杯の4試合は、すべてウイングバックとしての出場だった。サイドをひとりでカバーするため、サイドアタッカーを両サイドに各ふたりを擁すチームと対戦すると、ライン際一帯で数的不利に陥る。ウイングバックは後退を余儀なくされ、最終ラインは5バック同然になる。

 ウイングバックの平均的なポジションはウイングより平均距離にして20~30メートルほど低い。その場所で相手と1対1に臨めば、ボールを奪われた時のリスクが膨らむ。三笘をウイングバックで起用することは無駄遣いに相当した。

 サンジロワーズも5バック(5-3-2)で戦うチームで、三笘はカタールW杯同様、ウイングバックでプレーしていた。

"大外"の後方を任された三笘だが、それでも7ゴールを決めた。ウイングバックとして7ゴールを決める選手はそういない。三笘がベルギーリーグのレベルを超えた選手であることが、この数字からも見て取れる。

 ブライトンはカタールW杯時の森保ジャパンや、サンジロワーズとは趣の異なる、かつての川崎をもう2レベルほど濃厚にした、攻撃的サッカーの本流を行くチームだ。何と言ってもボール支配率が高い。サイドは片側(外側)がタッチラインなので、相手のプレッシングを浴びるのは内側からだけになる。相手が360度、全方位からプレスを掛けてくるピッチ中央の選手より、ボールを奪われにくい設定になっている。

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