浦和レッズの今季補強に福田正博が感じる優勝への本気度とビッグクラブ化への期待 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【Jリーグで浦和にしかできない役割がある】

 いずれにしろ、こうした補強敢行から汲み取れるのは、クラブの各セクションが自分たちの責任をしっかり果たしたということだろう。

 強化部は「優勝できるメンバーを揃えました」と胸を張れる仕事をし、バトンは現場の監督に渡された。そこで結果を出せるかは監督次第というわけだ。

 もちろん、「選手は揃えましたので、仕事はおしまい」ではない。シーズンが始まってみれば、補強した選手では足りない部分が見えてきたり、ケガ人が出たりしたら強化部は次の一手を打たなければならない。この点で浦和には、横浜F.マリノスのようなフロントと現場の高い総合力といったものを手にしてもらいたいと思う。

 これだけの補強は、当然ながら大きな予算があるからできるもので、それを実現可能なクラブはJリーグでは限られている。浦和のように予算があって、多くの熱狂的なサポーターがいるクラブが、予算の小さいクラブと同じような補強をしていては、Jリーグ全体のスケール感が小さくなってしまう。

 Jリーグ全体のことを考えた時、浦和には浦和にしかできない役割があると思っている。

 浦和が大きな予算を使って補強をし、他クラブを圧倒するような力を手に入れる。そうなることでJリーグの魅力は、もっと鮮明になるのではないかと思っている。

「Jリーグにビッグクラブは不要だ」という意見があるが、例えば私が試合を解説する際に、ビッグクラブ対スモールクラブの構図などが明確にあれば、サッカーをあまり知らない人たちも含めたもっと多くの人に、サッカーの面白さやJリーグの魅力が伝わると思うことが往々にしてある。

 ジャイアントキリングが海外で盛り上がるのは、ビッグクラブが負けると思わない相手に足元をすくわれるからだ。これが成立するには、誰もが認識するビッグクラブの存在が不可欠だろう。

 昨シーズン、Jリーグでは優勝に邁進する首位のヴィッセル神戸を下位に沈んでいた(当時16位)横浜FCが破ったことがあった。しかし、その試合は「ジャイアントキリングだ」とは受け取られなかった。もしはっきりとしたビッグクラブが存在していれば、違った驚きを持って扱われるニュースになったのではと思うのだ。

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