槙野智章が衝撃を受けたFWトップ10「バチバチ」「消える」「緩急」「ズルい」選手たち (4ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【何をしてもトップレベル】

2位 大迫勇也(ヴィッセル神戸)

 大迫勇也選手は、Jリーグで得点王を獲りましたよね。まあ、やっぱり「半端ない」んですよ。ボールキープからゴールへのパターン、すべてにおいて半端ない。

 代表でも長く一緒にやりましたし、一昨年はヴィッセル神戸で一緒にやりました。DFとしては本当に嫌な選手で。フィジカルで勝負する状況でも、彼が「だったらフィジカルでねじ伏せてやろう」とばかりに強い力を発揮する。

 空中戦も強い。「大迫ここにあり」というプレーばかり見せてくるんです。そして武藤嘉紀選手と同じく、練習量を年々上げていっているんですよね。

 チームメイトとしても心強い点ばかりでした。なんと言っても、彼がいればロングボール1本で状況をひっくり返せますから。そしてピッチ外でも模範となる存在でした。

 実際に対峙すると「足が出せない」感じになります。一度彼に聞いたことがあるんですよ。「どうやってボールをキープしているの?」と。返事はこうでした。

「相手のヒザを押さえている」

 FWが相手DFに体を預ける状況は多いですが、大迫は預けると同時に相手のヒザに手を当てると、相手は手も足も出せなくなるのを知っていた。ものすごい賢いですよ。

「どうやって覚えたの?」って聞くと、ブンデスリーガで190cmクラスのDFと対峙するのに、普通に体を預けていても負ける。だから、相手のヒザに手を置くことでボールキープできるのを覚えたと言っていました。

1位 興梠慎三(浦和レッズ)

 1位は、興梠慎三選手です。天才です。何をしてもトップレベル。いろんなことを表現できるし。なんで海外に行っていないのか。なんで日本代表でずっとプレーできていないのか。未だに謎すぎますよ。

 誰に聞いても、どのアンケートでも必ず上位にいるんじゃないですか? 一緒にやったらそのスゴさは当たり前のようにわかりますよ。人間性もはなまるです。練習試合で対戦相手から「どうやってボールを受けるんですか?」とか「どうやってボールを収めてるんですか?」って質問されても、ちゃんと答えてあげてるし。ファン・サポーターにも優しい。

 ドリブルができて、パスができて、空中戦も強くて、クロスに対しても入っていけるし、オフ・ザ・ボールの動きでも仕掛けられる。そしてPKも蹴れる。足も速いんですよ。キューンって行く1本、2本がめちゃくちゃ速いですからね。小林悠、佐藤寿人の裏抜け、背中の取り方とは、またわけが違うんですよね。

 唯一できないのが、ボックス外からのシュートですね。100何点も取ってるのに、ほとんど決めていないんですよ。ただ、もうそれ以外は全部パーフェクトにこなすんです。

 もし自分のサッカーチームに彼がいたらどうなるか。一歩ズレたロングボールも全部「ナイスパス」になりますよ。「ヤバい! ミスった!」と思ったパスも止めて、アシストとかにつなげてくれる。動き出しの速さやテクニックでそう変えてくれるんです。

 そしてその後に「ナイスボール!」って手を叩いてくれるんですよ。そんな選手います? こっちは「ごめん」って思ってるのに。「パスの出し甲斐のある選手」でもありますよね。生まれ変わったら、こういうタイプのFWになりたいなと思いますよね。

槙野智章 
まきの・ともあき/1987年5月11日生まれ。広島県出身。サンフレッチェ広島ユースから2006年にトップチームに昇格。DFとして攻守に渡る活躍を見せ、2010年からケルン(ドイツ)、2012年から浦和レッズ、2022年にはヴィッセル神戸でプレー。J1通算415試合出場46得点を記録。Jリーグベストイレブンには3度選ばれた。日本代表では国際Aマッチ38試合出場4得点。2018年ロシアW杯に出場した。2022年の現役引退後は、タレント、解説者、指導者として活躍中。

プロフィール

  • 吉崎エイジーニョ

    吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)

    ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。

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