2024年Jリーグ、主力流出&戦力ダウンで苦戦必至のクラブは? 識者3人が分析 (3ページ目)

【多くの選手が移籍した鹿島】

戦力ダウンクラブ/鹿島アントラーズ、東京ヴェルディ、北海道コンサドーレ札幌

篠 幸彦(スポーツライター)

 最初に挙げるのは鹿島アントラーズだ。MFディエゴ・ピトゥカ(サントス/ブラジウ)、DF広瀬陸斗(ヴィッセル神戸)、MF荒木遼太郎(FC東京)、MFアルトゥール・カイキ(スポルチ・レシフェ/ブラジル)、DF昌子源(FC町田ゼルビア)ら主力から貴重なバックアッパーの多くが移籍で離れた一方、加入はブラジル人MFギリェルメ・パレジ(タジェレス/アルゼンチン)ら数名と少ない。

 DFのヨシプ・チャルシッチが加入間近だったが、メディカルチェックで問題が発覚して破談。これは痛恨だった。ただそれ以上に、気になるのはストライカーである。

 2022年シーズン途中に上田綺世(フェイノールト)が欧州移籍して以降失速し、ストライカーの補強は急務とされてきた。昨季は鈴木優磨が14得点と攻撃を牽引したが、今季も彼だけに頼るのは苦しいだろう。1月29日に加入を発表したセルビアのFWアレクサンダル・チャヴリッチ(スロヴァン・ブラチスラヴァ/スロバキア)がどうなるか。「下位に低迷」まではいかないまでも、現段階の補強では戦力ダウンと言わざるを得ない。

 次に挙げるのは東京ヴェルディ。昨季、昇格プレーオフから16年ぶりのJ1昇格を果たした。そのベースとなる戦力を維持し、FW染野唯月のレンタルを延長した。FC町田ゼルビアから左サイドバックのMF翁長聖、ジェフユナイテッド千葉からMF見木友哉と主力の引き抜きに成功した。

 しかしながら、今季のJ1を戦い抜くだけの戦力のベースアップができたかと言えば難しい。昨季は31失点とJ2最少の堅守を誇ったが、得点数は57で9位と決して高い数字ではない。優勝した町田と比べれば22点も少ない数字だ。

 毎年のように昇格組が得点の部分で苦戦するのはよく目にする光景だが、現時点の補強を見るに東京Vも厳しい戦いになると予想できる。ガンバ大阪から獲得したFW山見大登は楽しみな戦力ではあるが、昨季は1得点、キャリアを通じても4得点と過度な期待はできないだろう。

 最後に挙げるのは北海道コンサドーレ札幌。昨季の主力であるFW小柏剛(FC東京)、MFルーカス・フェルナンデス、DF田中駿汰(ともにセレッソ大阪)の移籍は間違いなく戦力ダウン。DF福森晃斗(横浜FC)も新天地を求めた。

 その補填としてFW鈴木武蔵(G大阪)、MF長谷川竜也(東京V)、DF高尾瑠(G大阪)、DF家泉怜依(いわきFC)を加え、昨季途中にMF金子拓郎(ディナモ・ザグレブ)が移籍したことで突破力が落ちたウイングバックにMF近藤友喜(横浜FC)を獲得した。

 限られた予算のなかで人員は補充できたが、スケールダウンは否めない。とくに強力だった金子、ルーカス・フェルナンデスの両翼を失い、あの突破力を取り戻すのは簡単ではないだろう。4年ぶりに復帰となった鈴木が、かつてキャリアハイの13得点を記録した札幌で再起できるか。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の手腕に期待したい。

プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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