V・ファーレン長崎はFIFAに提訴 監督の「二重契約問題」にブラジル人記者が迫る (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【カギを握るのは代理人?】

 最後に当事者であるカリーレだ。彼は記者会見でこう述べている。

「私は何の心配もしていない。成り行きを見守るだけだ。サントス会長、チーム幹部、サントスの弁護士たち、私の代理人とその弁護士たちも、全員が私に落ち着いていていいと言ってくれている。どれくらい時間がかかるかはわからないが、彼らがすべて解決してくれるだろう」

 どこか他人事のようにも聞こえるが、「いつまでかかるかわからない」という言葉の裏には、彼の不安が見え隠れしているようにも感じる。それもそうだ。カリーレはブラジル代表監督候補にも挙がったことのある優秀な監督だが、今回の事件は彼のキャリアの大きな汚点となる可能性があるのだ。

 それもしても、なぜこんなに話が食い違うのか。筆者は、カギを握るのはカリーレの代理人であるパウロ・ピトンベイラではないかと思っている。なぜなら、登場人物たちのなかで唯一、全員と話をしているのは彼だけだからだ。カリーレの発言からは、ピトンベイラが自分の弁護士まで巻き込んでいることもわかる。これは普通ではない。何か問題がある証拠だろう。

 しかし、だからと言ってサントスやカリーレがまったくイノセントだというわけではないだろう。仮に代理人が「カリーレはフリーだ」と言ったとしても、サントスは書類でそれを確認すべきだったし、カリーレは代理人が「長崎は契約解除で合意した」と言っても、それが本当であるのかを直接確認すべきだった。もし確認していないのならば、プロとしては甘すぎる。

 カリーレが正式に監督デビューしたことで、この問題には別な登場人物も巻き込まれようとしている。彼がベンチに座れたということはサンパウロ州リーグ、そしてその上のブラジルサッカー連盟(CBF)も、カリーレを監督として登録しているということである。もしこの提訴をFIFAが認めたら、CBFにも落ち度があるということになる。

 この事件で一番、真摯で紳士的な動きをしているのは紛れもなく長崎だ。まずは自分たちの主張を明らかにし、サントス及びカリーレ側に異議を申し立て、それでも解決できないと知るとFIFAに訴えた。

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