高校サッカー選手権でPK戦が例年以上に多い「運ではなく実力」と臨んだ各校の対策は? (3ページ目)

  • 森田将義●取材・文 text by Morita Masayoshi

【各チームのPK戦への対策】

 選手権にPK戦は付き物だと各チームが対策を進めているが、それぞれの取り組み方を紹介していこう。

 今年度の夏のインターハイ王者である明秀日立(茨城県)は、日々のトレーニングでPK戦の練習はしていない。本番同様に緊張感のあるシチュエーションで蹴ることが大事だと考え、対外試合などで拮抗した展開となった際に、最後にPK戦を入れていたという。

 惜しくも3回戦で姿を消したが、夏のインターハイ決勝では7人全員のキッカーが成功させるなど、着実に成果は出ている。

 成功だけでなく、失敗も含めた実戦経験がモノを言うと考えるのは近江(滋賀県)だ。前田高孝監督はこう話す。「工夫よりも痛みを力に変えるほうが大事だと思っていた。結局、どんな練習をしようが、選手が重要性を感じていなかったら何も意味がない。次戦で痛みを味わい、方法を考え、力に変えるのは自分次第」

 夏のインターハイは1回戦で成立学園(東京都)にPK戦で敗退。以降はリベンジに向けて、選手それぞれが日々のPK練習で創意工夫をこらしながら成功率を高めていった。

「選手権は40分ハーフで即PKなので、彼らもPKの重要性はわかっていたと思う」と指揮官が話す今大会ではそうした成果が実る。「肝が据わっている。練習の時と試合の時での目つきが全く違い、スイッチを入れられるいい選手」(前田監督)というGK山崎晃輝(2年)の活躍によって、2戦連続でPK戦勝利をおさめベスト4までたどり着いた。

「PKに必要なメンタルの強さは普段の練習で身につけないといけない。トレーニングで失敗してもすぐに切り替えて、次に挑めるか。たくさん走って疲れた後でも、きれいに蹴れるか。普段の練習がモノを言うので、PK戦自体は(次戦に進む勝者を決める)意外と理にかなった決め方かもしれない」

 米子北の中村監督はこう話す一方で、指導者としての本音も打ち明ける。

「監督目線で言わせてもらうなら、延長戦をやらせてほしい。もしくは試合時間を90分にしてほしい。ウチは走っているチームだから、選手に悔いが残らないよう最後まで走りきらせてあげたい」

 今大会も残るは準決勝と決勝の3試合。ここからは試合時間が前後半で90分となり、決勝では10分ハーフの延長戦もあるため、PK戦は減るかもしれないが、試合がもつれた際は各チームのPK戦事情にも注目してほしい。

プロフィール

  • 森田将義

    森田将義 (もりた・まさよし)

    1985年、京都府生まれ。10代の頃から、在阪のテレビ局でリサーチとして活動。2011年からフリーライターとしてU-18を主に育成年代のサッカーを取材し、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿を行なう。

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