青森山田は高校サッカー選手権4度目の頂点に立てるか J2制した「黒田イズム」継承 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とはいえ、町田の快進撃が青森山田に与えたのは、必ずしもプレッシャーだけではなかった。それどころか、刺激や自信といった、むしろポジティブなもののほうが多かったと言ってもいいのかもしれない。

 山本は「この前、(町田に所属する青森山田出身の)藤原優大さんが山田に帰ってきた時に話したんですけど」と言い、こう続ける。

「町田で日頃からやってることは山田と変わらないって言ってたんで。本当にプロの選手相手でも(高校生を相手にするように)すごく細部までこだわって、しつこさもあるなかで練習をやっているのはすごいなと思う」

 黒田監督がプロの世界に飛び込み、かつて自分たちに落とし込んでくれていたことをプロの世界でも試す。それが間違いでないことが証明され、あらめて青森山田の自信になっているというところだろう。

 山本が語る。

「黒田監督も『守備自体は高校生(の自分たち)がやっていることでも間違いはない。(プロの舞台に立つためには)あとは技術の部分だったり(を伸ばすこと)だ』と言われた」

 数々の実績を残してきた前任者からバトンを引き継ぎ、昨年度途中から青森山田の指揮をとる正木昌宣監督も、「プレッシャーは感じているし、周りのそのような(黒田監督と比較される)目っていうのも感じている」と認めつつも、「ただ、試合は続くし、新入生も入ってくる。本当に次から次にいろんなことがあるので、プレッシャーを感じる暇がないっていうのも本音」だと言い、こう続ける。

「私自身、一番刺激をもらっているのが黒田前監督。その刺激で、自分も負けないぞっていう強い気持ちが出てくるし、山田でやっていることは高いレベルでも通用するんだっていう自信にもなる」

 そんな青森山田が、今年度も全国高校サッカー選手権大会に出場してくる。

 すでにユース年代日本一のタイトルを獲得してはいるが、「正直 、Jユースと高体連は別物だと思っている。選手権は一発勝負だし、何が起きるかわからない大会」だと山本。冷静に大会を見通し、「しっかり準備して、この優勝を自信にしてもっと強いチームになりたい」と語る。

 もしも青森山田が来たる選手権で優勝すれば、2年ぶり4回目。と同時に、いわば町田とのアベック優勝となる。今度は「選手権」を語るうえで、「町田」が話題となる番だ。

 町田の試合は「生でも3試合くらい見たし、DAZNではかなりの試合数を見ている。(町田の選手には青森山田の)OBもいるので、見られない時も速報とかで気にしていた」と語る正木監督は、そこに垣間見る黒田監督らしさについて、「本当にブレない。どこへ行ってもブレない方だなと思う」と感嘆する。

 だが、町田に持ち込まれた黒田イズムの源流が、青森山田にあることは言うまでもない。

 図らずも今季の町田が証明することになった青森山田の強さ。来たる選手権では、優勝候補・青森山田が例年以上の注目を集めるはずである。

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