ヴィッセル神戸J1初優勝の「始まりは去年の最終節」 永井秀樹SDは「黄金期のヴェルディに似ている」 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

 もちろんそれは、大迫という絶対的なFWがいたことが大きく、それに反応できる武藤や佐々木大樹の存在もありました。山口と酒井の存在も大きいですよ」

── 今、名前が挙がった経験豊富な選手たちの存在感は、ピッチ内にとどまらず外でも?

「ピッチの内外を問わず、です。経験値と実績において、大迫、武藤、山口、酒井の4人は必要不可欠で、彼らの高い要求に引っ張られるように、周りの選手が伸びたというか、成長したというか。自分が所属した黄金期のヴェルディに似ているんです」

── 永井SDがプロデビューを飾ったヴェルディは、ラモス瑠偉さん、三浦知良選手(現UDオリヴェイレンセ)、都並敏史さん、柱谷哲二さんらの日本代表を、ごっそりと抱えるスター軍団でした。加藤久さんのような元日本代表の大ベテランも在籍していました。

「オフザピッチを含めて華やかな部分が強調されましたけれど、実際はJリーグ開幕当時の10チームで一番厳しい集団だったのでは。練習中はいつもケンカになる、と言ってもいいぐらいでした。若手が2回ミスをしたら、ラモスさんが激怒する。怒られる側は腹が立つし、悔しいけれど、ヴェルディはそれで勝っていった」

── 練習中は衝突するけれど、試合ではまとまっていました。

「そうです。ラモスさんも試合前の円陣では、『若手のミスは自分が全部カバーする』と言って、そのとおりにプレーしていました。当時のヴェルディは、僕にとってプロ意識の原点です。

 高い要求なしにいいチームにならないし、勝利に近づけない。だから、大迫たち4人が高い要求をする気持ちは、僕にはものすごく理解できる。一方で、ラモスさんに叱咤されたこともあるので、言われる立場の若手や中堅の気持ちもわかる。個人的にはもっと激しく要求し合ってもいいんじゃないかな、と思っているぐらいです」

── なるほど。

「プロってそういうものじゃないですか? もちろん、僕の現役当時とは時代が違うので、練習中にケンカになるような世界を知らない選手もいる。そこは難しいところで。厳しく要求し合うことを強制するのも、ちょっと違う。でも、今のヴィッセルは要求して高め合うところのバランスが、よくなってきたと感じます」

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