「強く印象に残っている」Jリーガー5人をレフェリー視点で佐藤隆治が厳選「審判員泣かせ」「え、そこに出すの」「拍手したいくらいのFK」 (4ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

 イニエスタ選手は、そういうミスがほとんどありませんでした。トラップしたらすぐにはたくし、ワンタッチでさばくこともあるので、彼と受け手の選手を絶対に掴んでおかないといけない。あのトラップには唸らされました。

【5】永井謙佑(FW)
 <アビスパ福岡→ヴィッセル神戸→名古屋グランパス→スタンダール・リエージュ→名古屋グランパス→FC東京→名古屋グランパス>

 FWの選手で審判員泣かせというと、佐藤寿人さんの名前があがることが多いと感じます。オフサイドラインぎりぎりで駆け引きをする彼のプレースタイルは、副審からすると神経質にならざるを得ないタイプなのでしょう。

 僕自身の気になる存在は、永井謙佑選手でした。

 中村憲剛さんや小笠原さんのパスもそうですが、縦へのスピードを出されると、レフェリーは困るのです。その意味で、永井選手はレフェリー泣かせな選手と言えます。

 僕自身、短距離には自信がありました。彼は50メートルを6秒切るタイムで走りますが、僕は6秒1から2ぐらいでした。

 攻撃時の永井選手は、ペナルティエリアの中か外かという際どいところへ、ものすごいスピードで侵入していきます。DFとちょっとでも接触したら、彼のプレーに影響が及ぶ。ファウルになる可能性がありますが、その接触は競り合いながらの「面」ではなく、瞬間的な交錯としての「点」になることが多い。

 その瞬間を見逃してはいけない、遅れてはいけない。できるかぎり近くで、いいポジションで見ることを自らに課しました。

 レフェリーとしての自分は、スプリントを強みにしていました。そのために筋トレもやっていましたが、永井選手が出場する試合前はちょっと違う種類の興奮がありましたね。

 ハムストリングスに肉離れを起こさないように、試合前から入念にストレッチをする。いざ彼がスプリントしたら、そのスピードに遅れないように、自分の動き出しのタイミングを早くすることでカバーするようにしました。

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