中村俊輔が「一番嫌なシューター」だった 引退したGK南雄太がウザいと思った理由とは (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【GKが嫌がるところを知っている選手】

 南はそう言って続けた。

「シュートはいろいろタイプがあると思うんです。パワー系で射抜くようなシュート、タイミングをずらしたシュート......。自分の場合は、"GKが嫌がるところを知っている選手"が一番、嫌でしたね。GKなら"このタイミングは嫌"というのがわかり合えると思うんですが、そういうのを知ってか知らずか、自然にやってくる選手はがいて、ウザいですね」

 そして彼が名前を挙げたふたりの選手は、意外にもストライカーではなかった。

「宇佐美(貴史)選手はGKの嫌なタイミングを知っているな、と思いました。何回も対戦したわけではないですが、強く印象に残っています。彼はシュートの時、ボールを少しだけ軸足より後ろに置くんですよ。それによって、シュートのタイミングが一個分、早くなって、合わせづらいんです。本人が意識しているか、わからないですが、それを駆け引きに使われると難しい。フォロースルーが短い選手は、(ボールの軌道が)読めないので嫌ですね」

 なぜ、この選手のシュートは入って、この選手のシュートは止められるのか。一見、同じに見えるシュートにも、実は差があるのだ。

「一番に"嫌だな、ウザ"って思ったのは、俊さん(中村俊輔)ですね」

 南はその理由を説明した。

「敵でも思いましたが、味方になって、なんで嫌だったのか、わかりました。とにかくGKのタイミングをずらしてくる。GKを動かしてから逆サイドに打つとか、いつも考えてやっている。FKを例にするのが一番わかりやすい。普通は壁のほうにボールを落として決めるところを、俊さんは年間のなかで必ず"捨てるFK"がある。あえてGKが立っているほうに蹴るんです。

 それがスカウティングで情報が入るじゃないですか? そうなるとGKは動けない。"自分が立っているほうに打たれる"ってなると、身動きができないんです。GKは先読みの駆け引きで勝つのが大事ですが、そこで主導権を奪われる。それで壁の裏へボールを入れると、面白いように入る(笑)」
(つづく)

Profile
南雄太(みなみ・ゆうた)
みなみ・ゆうた/1979年9月30日生まれ。神奈川県出身。GKとして若くして頭角を現し、静岡学園高校卒業後、柏レイソル、ロアッソ熊本、横浜FC、大宮アルディージャでプレー。1997年、1999年と2度のワールドユースに出場。2023年10月、現役引退を発表。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る