川崎フロンターレの「常勝」への執念 不本意な戦いでも手にしたタイトルの意味 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 2017年の初優勝をきっかけに、5年で4度のJ1制覇を成し遂げた川崎ではあるが、2020年の3度目の優勝時をピークに、その力は明らかに下降線をたどっている。

 長くチームを支えてきた中村憲剛が引退し、三笘薫、田中碧、守田英正、旗手怜央、谷口彰悟と、日本代表クラスが次々に海外移籍でチームを離れたのだから無理もない。

 J1優勝を逃した2019年のルヴァンカップ優勝を含め、タイトル獲得は5シーズン続いていたが、それも昨季でストップ。昨季の川崎は6シーズンぶりに無冠に終わっている。

 J1連覇を知るMF脇坂泰斗は、「もちろん、昨年も(タイトルを)獲れればよかったが」と悔恨を口にし、こう続ける。

「ここで2年連続無冠というのは、そのままズルズルいってしまいかねないなと感じていた。やっぱりタイトルは自分たちからつかみにいかないと絶対獲れない。獲ってきたタイトルを経験しているから、それは言える。そこの気持ちが薄れてしまっていくのは絶対よくない」

 チームを率いる指揮官も気持ちは同じだ。鬼木監督は危機感に近い言葉を口にする。

「タイトルはどんな形でも獲り続けないと、獲れないことに慣れてしまう。タイトルを獲る時の空気感という、どうしても言葉では説明できないものを選手たちには味わってほしいし、次の世代にも伝えていってほしい。そこはすごく必要なことだと思っている」

 たとえ、2、3年であろうと、タイトルから遠ざかれば、それだけ優勝の味を知らない若い選手も増えてくる。

 特に最近は、実際に川崎がそうであるように、海外移籍が活発になり、選手の入れ替わりも早い。かつての鹿島アントラーズのように、有望な新卒選手がチームで長くプレーすることで、"勝者のDNA"が脈々と受け継がれていく時代ではなくなっている。

 たかが1、2年。また翌年、獲り返せばいい――そんな考えが通用するほど、勝負の世界は甘いものではない。

 脇坂が続ける。

「絶対にチームとしてタイトル(獲得)に貪欲にならなければいけないという意味で言うと、やっぱりこういった苦しいシーズンのなかでも、しっかりつかみ獲ることができたところは、クラブにとって大きかったんじゃないかと思う」

 川崎は2年連続無冠という不名誉を回避し、今季最後の一冠を手にした。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る