イニエスタの獲得、元日本代表選手の結集 Jリーグ初優勝のヴィッセル神戸の取り組みに福田正博は「今後の指針になる」 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【来季も混戦が予想される】

 いずれにしろ今シーズンの神戸の優勝によって、J1タイトルは久しぶりに西日本にもたらされた。2017年から2022年までの川崎フロンターレと横浜FMとの2強時代は、J1優勝争いは神奈川県のみで行なわれているような状況だったが、ようやく変化が出た。

 終わったばかりで気の早い話だが、来季のJリーグに目を少し向ければ、横浜FMは優勝を逃したとはいえ相変わらず選手層は厚く、来季も優勝争いに加わるはずだ。一方の川崎は転換期を迎えたと言っていい。鬼木達監督のもとでどう生まれ変わるのか。

 また、今季の浦和レッズは本当の意味で優勝争いに少し加わることができた。「あの試合で、あのゴールが」というような"たら・れば"を言っても優勝が遠かった昨季とは違い、今シーズンはそういうターニングポイントが少なからずあった。

 その点で少し優勝争いに近づいたシーズンだったわけだが、これはマチェイ・スコルジャ監督の力によるところが大きかった。自身のサッカー観に固執することなく、相手と自軍の戦力を見極めて柔軟に戦い方を変えたのが印象的だった。

 それだけに来季はシーズン終盤まで優勝争いができると期待していたのだが、残念ながら退任となってしまった。あれだけ有能でまだ51歳とあれば、本場ヨーロッパでのキャリアアップを狙えるだけに、仕方ないことではある。

 鹿島アントラーズはシーズン序盤に岩政大樹監督の解任もあり得るところまで追い込まれたが、そこからの反撃は目を見張るものがあった。あの力をシーズンのスタートから出せればと思うのだが、それをできないのがサッカーの難しさでもある。

 鹿島も岩政監督の退任が発表されたが、果たして来季はどうなるのか。2016年のリーグ優勝から8年目となる来季、そろそろ鹿島らしい戦いを開幕から終盤戦まで見せてもらいたいところだ。

 来季のJリーグも混戦が予想されるなか、昨季に続いて今季も3位でフィニッシュしたサンフレッチェ広島を含めて、どのクラブも優勝を狙える位置にいる。31年目となるJリーグの新時代を牽引するチームはどこか。シーズンオフの期間に各クラブがどう補強に動くかを含めて、いまから楽しみでならない。

福田正博 
ふくだ・まさひろ/1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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