ジュビロ磐田のJ1昇格を支えた絆 「チームのために、という選手が揃っていた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【最終節で見せた「成長の証」】

 90分をとおして課題と言える点が出たが、それも現状では織り込み済みだった。

「たとえ失点しても、落ち着いて自分たちのサッカーをしよう」

 キャプテンの山田は事前にチームメイトたちに伝え、伏線を張っていた。

 そのおかげか、磐田はじわじわと反撃に転じる。栃木は人海戦術で守備を固めていたが、ゾーンの意識は低く、簡単にギャップに人が入れる状況で、そこにボールを出し入れすることで押し込んでいった。FKからたて続けにシュートを放つなど、アクシデントも含めて何かが起こる可能性は高まっていた。

 そして41分、ショートコーナーを受けたドゥドゥが30メートルくらいの位置から思いきって右足を振った。そのシュートが相手を掠めて、わずかにコースが変わってゴールネットを揺らした。

「先に失点して苦しい状況に追い込まれましたが、そこで奮い立って、"我慢して戦ったら点が取れる"というところは成長の証なのかなと。それは長いシーズンを戦ってきて身についたことです」(磐田/横内昭展監督)

 磐田は後半もペースを握ったまま、優勢に試合を展開した。そして62分、高い位置でボールを持ったセンターバックのリカルド・グラッサが、左サイドのドゥドゥにつける。ドゥドゥが幅を取って、インサイドのギャップに入った左サイドバックの松原后にパス。松原は反転から左足でクロスを折り返すと、ファーサイドから入ってきた松本がヘディングで合わせ、逆転弾に結びついた。

「2020年の最終節も栃木戦でゴールしていて。シーズンの最後らへんは、(ゴールする)いいイメージがあります」(松本)

 値千金のゴールだった。松本はチーム最多タイの9得点目だったが、他にもジャーメイン良、ドゥドゥが9得点で並び、上原力也が8得点、後藤が7得点、金子翔太、松原が6得点。突出したゴールゲッターはいなかったが、どこからでも点が取ることができた。

<全員でゴールを奪い、全員でゴールを守る>

 そのスローガンは、チームの絆とも密接に結びついていたと言えるだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る