清水エスパルスJ1昇格に王手 J2最強攻撃陣をつくりあげた「秋葉マジック」の正体 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【J2屈指のタレントでリーグ最多の77ゴールを記録】

 これまでJ2を勝ち抜いてきた多くのチームは、「堅守」を裏づけとした。連敗や大量失点を避け、シーズンを通して大きく崩れないことは、J1昇格の必要条件と言うことができる。

 その一方で、J1定着のためには「堅守」だけでは限界がある。失点を減らすだけでなく、得点できる「形」を持たなければならない。

 勝利を積み重ねていた時期にも、権田はこう話していた。

「勝ったらすべてOKではなく、勝ちながら修正していくことも大事だと思っています。今はJ2ですけど、J2で勝って満足はしていないですし、J1へ行っても勝てるベースを作る状況でもあると思います。それに対しては、こだわり続けてやらないといけない」

 ふたつのシステムを使い分けながらハイラインを意識し、90分間にわたってプレー強度を保つ。コンビネーションを使った崩しを仕掛けつつ、縦への意識を持って中長距離のパスも使う。J1昇格後につながる「ベース作り」はシーズンを通じて行なわれ、戦い方に幅が生まれてきた。

 秋葉監督も折に触れて、チームの成長を口にしてきた。

「我々のチームにはいい選手がいて、自分たちのサッカー観がたくさんあるぶん、なかなかひとつになるのが難しいところがありましたけれど、今はホントに勝利するためにチームがひとつになっている。

 毎試合3点、4点を取れればベストですけれど、そうでなくてもしっかりと手堅く勝ち点3を取れる。そういう大人のチームに、勝負強いチームに、一歩ずつなっていると感じます」

 チーム最多にして得点ランキング3位の15ゴールをマークしているMFカルリーニョス・ジュニオ、昨シーズンのJ1得点王で11ゴールのチアゴ・サンタナ、さらには10得点10アシストの乾貴士ら、清水はJ2屈指のタレントを揃えている。ここまで77ゴールはリーグ最多だ。

 GK権田、CB鈴木義宜、CB高橋祐治らJ1で実績を積んだ経験者が並ぶ守備陣も、失点数をリーグ最少2位に止めている。攻守のバランスが噛み合ったチーム、との評価が当てはまる。

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