コンサドーレ札幌指揮官は大敗でも胸を張る 会見であえて言及した「頭にいれてほしい」こと (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【弱者には弱者の作法と価値観が】

「田中(駿汰)、小柏(剛)は大卒、岡村(大八)はJ2群馬、馬場(晴也)もJ2東京ヴェルディ、中村(桐耶)は(札幌の)ユースからJFLのHonda。浅野(雄也)は(サンフレッチェ)広島から来たが、ほぼベンチメンバーだった。そういう選手が多いなかで、王者マリノスと渡り合える。そこを頭に入れてほしいし、努力してすばらしいプレーを見せた彼らを、私は誇りに思う」(ペトロヴィッチ監督)

 どんな戦力(予算規模)で、どんな戦いを見せているのか。それを踏まえて、チームをジャッジすべきなのだ。

 たとえばスペインのラ・リーガでは、昨今、ジローナ、ラージョ・バジェカーノ、オサスナがセンセーショナルな攻撃的プレーで好成績を収めている。メディアやファン・サポーターは、ビッグクラブにも互角のサッカーを挑み、ボールを持って攻める姿勢を礼賛。クラブもそれを活力に、輝きを増す。ビッグクラブにもひと泡吹かせてやる、という気概が、ラ・リーガ自体の活気になっている。

 しかし、「優勝を!」とは本気では考えていない。期待を抱くのは人情だが、長いシーズンを通すと、戦力差が出ることを承知しているのだ。

 一方でビッグクラブは、どう勝つかが問われる。何の手も打てずに押し込まれて、カウンター一発でどうにか勝ちを拾うという、無様な真似を見せた時、番記者やファン・サポーターは不満を示す。勝利のみに満足しない。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」は勝負の原則だが、弱者には弱者の、強者には強者の作法が求められ、価値観も違う。

 だがJリーグは、プロ野球の影響もあるのか、「どのチームも優勝できる」という意識が強い。もちろん、その可能性があるからこそエンターテイメントとして成立しているのだが、現実には優勝を狙える戦力規模のチームは限られているのだ。

 札幌の場合、シーズン中も頭角を現した選手は狙われる。今シーズンも、攻撃の中心的存在だった金子拓郎が7月にNKディナモ・ザグレブへ移籍。その穴を埋めるのは簡単ではない。

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