湘南ベルマーレはなぜJ2に落ちそうで落ちない? 元Jリーガー坂本紘司社長が語る「サッカーの世界基準」を読み解く力 (5ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • photo by Getty Images

【数年後に間違っていなかったと言えるように】

 選手の獲得については、経営規模と密接にリンクする。

 2022年度の湘南の売上げは24億円強だ。経営規模を拡大してきているものの、同年度のJ1クラブでもっとも規模が小さく、同年のJ2に組み込んでも上から6番目となっている。

「我々は35億円規模の予算を目指していますので、勝つための企業努力を続けていく。Jリーグはアジアで勝てるクラブを作っていく方針を打ち出していて、これから格差が生まれていくことも想定される。そういうなかで、上位クラブに追随していく気概を持っています」

 残り5試合の対戦相手は、京都サンガ、神戸、名古屋グランパス、横浜FC、それにFC東京となっている。12月3日の最終節が終わった瞬間、湘南はどのような立場にいるのだろう。

 坂本が表情を引き締めた。それまでも引き締まった表情で話していたが、瞳に宿る決意の色がより濃くなっている。

「サッカー的にできることは増えていて、増えたなかで走力は維持している。あとはそれを、どう勝ち点に結びつけるか。そこの難しさは感じていますが、何年後に振り返った時に、間違っていなかったと言えるようにするために、今が本当に大事です」

 自分たちのスタイルに満足しない。
 過去に満足しない。
 未来へ向かっていることに満足しない。
 今を大事にして、未来へつなげる。
 未来へ向けてやっていることに満足せず、目前の結果にこだわる。
 現状を受け入れて、今やるべきことを自分たちに問いかける。

 坂本が言う。代表取締役社長の決意は、クラブの総意と言っていいだろう。

「今やるべきことは、勝つことです。残り5試合で、ひとつでも上の順位を目指すことです」

プロフィール

  • 戸塚 啓

    戸塚 啓 (とつか・けい)

    スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本サッカー』(小学館)

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