横浜F・マリノスに見る日本サッカーの構造問題 頂上決戦で右肩下がりが明らかに (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【戦力ダウンが成績に反映】

 この日の日産スタジアムに描き出されたのは、それに屈する横浜FMの姿だった。神戸を讃えたい気持ちより、横浜FMを嘆きたくなる気持ちが勝る。
 
 なぜ横浜FMは今季、右肩上がりを示せなかったのか。むしろ右肩下がりに転じたか。欧州サッカーを見ればわかる通り、優勝チームはそれなりにお金が舞い込むので、おのずと補強に力を入れることができる。大物がひとりふたり、チームに加わることは珍しくない。チーム内にその結果生じる高次元のライバル争いが、チーム力を高める源となっていく。

 横浜FMにはそうした要素が欠落している。レオ・セアラ(セレッソ大阪)、岩田智輝(セルティック)、仲川輝人(FC東京)、マルコス・ジュニール(サンフレッチェ広島)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)。出て行った主な選手はこの5人になるが、入ってきた選手と相殺すれば、戦力的にマイナスになることは明らかだ。ケガで長期離脱している小池龍太も加えれば、マイナス度はさらに膨らむ。それが今季の成績にそのまま反映された恰好だ。

 横浜FMよりもっとわかりやすいのが川崎だ。守田英正(スポルティング)、三笘薫(ブライトン)、旗手怜央(セルティック)、田中碧(デュッセルドルフ)、谷口彰悟(アル・ラーヤン)が次々と海外へ飛び立ったにもかかわらず、それを補う選手を獲得していない。獲得できなかったと言うべきか。凋落の最大の原因はそこにある。フロントの責任は重い。

 ただ、フロントの肩を持つわけではないが、このご時世において補強が難しくなっていることも事実だ。それなりに力を備えた日本人選手は、次々に欧州へ渡る。欧州組の数は100人に迫ろうとしている。国内でプレーする日本代表級は数えるほど。横浜FMで言うなら岩田、仲川、藤田の代役を探すことは簡単ではない。だが、代わりになる選手を連れてこない限り、戦力はダウンする。

 下位チームより、上位チームにとってより厳しい状況にある。横浜FM、川崎が伸び悩む理由はわかりやすい。

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