リーグ1位のアシスト数・樋口雄太は無心でボールを蹴っている「練習してない時のほうが逆にいい」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

【出場機会を失っていた樋口に転機が訪れた2020年】

「神戸戦でデビューした時は、このまま試合に出続けられるかもしれないと思いましたけど、やっぱり、そううまくはいかなかった。

 覚えているのが、ホームで戦ったルヴァンカップの柏戦。相手にはオルンガがいて、ボランチで先発したのですが、自分のところが穴になっていると、はっきりとわかるくらいに狙われました。自分が相手にはがされまくって、毎回シュートまで到達されてしまった。

 試合中も『やばい、やばい......』と思って焦っていたから、余計にいいプレーなんてできるわけがないですよね。スコアは0−0でしたけど、あまりにコテンパンにやられすぎて、一時期、サッカーが楽しくなくなったくらいでした」

 成長した今なら、その時の自分がどうだったかを省みることができる。

「最初は何も考えずにプレーできていたのが、少しずつ求められることも増えてきて、考えるようにもなって......初めてプロとしてプレーすることの怖さや責任を感じました。

 当時の自分は、ボールを持ってもイチかバチかのプレーが多く、おまけにミスを恐れてプレーも消極的。今、考えればわかりますけど、そんな選手、試合で起用したくはないですよね」

 その後、出場機会を失っていた樋口に転機が訪れたのは、プロ2年目の2020年だった。

「チームが勝ち星から遠ざかっていた時期だったこともあって、金明輝監督(当時)に呼ばれると『次のFC東京戦で起用するから、相手のエースであるレアンドロを好きにやらせないように徹底的にマークしてほしい』と言われました。結果は3-2でしたけど、与えられた役割を全うし、攻守でチームがやろうとしていたことを体現できた。

 そこから、試合でもチャンスをもらえるようになって。それまでは自分もおぼろげに『移籍しようかな』なんて考えていましたし、金監督にも『期限付き移籍させたほうがお前のためになるのではないかと迷っていた』と、冗談を言われたくらいでしたからね」

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