谷晃生の野望「日本人GKに対する世界の目を変えることもガンバへの恩返しになる」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 ただ、過去に、ガンバアカデミー出身のGKが世界で活躍しているという前例がなかったことを思えば、僕がその姿を示し、日本人GKに対する世界の目を変えることもクラブへの恩返しのひとつなのかな、と。行くと決めた以上は、期限付き移籍とはいえ、ガンバのことは頭から外して、退路を断って飛び込むくらいの覚悟で臨まなければいけないと思っているし、その結果として、この先もガンバに必要だと言ってもらえる選手であり続けたいと思っています」

 わからないこと、うまくいかないことがあるのは覚悟しているだけに、不安はない。GKというポジションもあって、より"言葉"の必要性は自覚しているが、「サッカーのところはなんとかなりそうな気はしますけど、それ以外のところはまだまだこれから」だという。

 だが今シーズン、チームメイトとして戦ってきたネタ・ラヴィ(イスラエル出身)やイッサム・ジェバリ(チュニジア出身)の姿から学んだことも参考に、海外でも適応するイメージはできている。

「文化も、生活も、人間性も違う海外に飛び込むからこそ、あえて少しネジを外していくのも大事かなと思っています。いきなりチームに加わってきた日本人選手がツンツンして愛想もよくないというよりは、そのほうが受け入れる側も受け入れやすいはずだから。

 それは、今シーズンのガンバの外国籍選手から学んだことでもあります。僕がベルギーに行く以上に、ネタやジェバリが日本に来て、母国の選手がほとんどいない、文化、宗教、食べ物もまったく違う国、Jリーグでプレーするほうがよほど大変だったと思うんです。なのに、彼らはあっという間にチームに溶け込んだ。

 それはなぜかと考えたら、"入り方"にあったと思うんです。彼らは最初から、言葉は通じなくてもすごく明るく、オープンマインドだったし『日本の文化を知りたい』『ガンバに溶け込んで、キミたちと仲間になりたいと思っている』という思いを伝えてくれた。

 そうすると、やっぱり僕らも『なんとか彼らを助けてあげよう』『話をしたいな』って思うじゃないですか? それを見習って、僕も少しネジを外し目でいこうかなと(笑)。幸い、相手の懐に入っていくのは得意なほうなんで、まずは言葉の壁をあっさり越えるくらいのコミュニケーション力を発揮していこうと考えています」

 彼の話を聞きながら今シーズン、谷がチームで見せてきた姿を思い出す。宇佐美貴史や三浦弦太、鈴木武蔵など、歳の離れた経験豊富なベテラン選手を前にしても、谷に臆する様子はなく、クラブハウスではよく彼らを呼び捨てにしては「貴史"くん"な!」などとツッコまれていたものだ。

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