川崎フロンターレ、2戦連続「首位叩き」へ 奇跡の逆転優勝へ狼煙を上げられるか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

【逆転優勝へのキーマンは?】

 しかし、勝負に対する執念を感じさせ、そのなかで各選手が力を出しきっていた。

 1トップに入った山田新は前線でボールを収めながら、際どい反転シュートを狙い、相手センターバックの足を使わせて疲弊させていた。中盤では脇坂泰斗、瀬古樹、ジョアン・シミッチが随所で三角形を作って、ボールを前に押し出した。宮代大聖は左サイドに入って起点になっていたし、右の家長昭博が勝負どころで見せる1対1は格別で、うっかり食いついた敵を斬り倒す迫力があった。

 ひとつの仕組みのなかでプレーすることで、選手が真価を出しつつある。局面で勝負できるテクニックがあるからこそ、応用にもつながっている。たとえ劣勢でも、各選手の戦術眼と練度の高さがあるからこそ、カウンターも決まる。ボールポゼッションにより、相手のリズムも断ちきれる。状況によって、3バックも使い分けることができる。うまいだけでなく、"戦い上手"になってきているのだ。

「カウンターではチャンスを作れていたし、そこの狙いを出せていました。しっかりボールを動かす時間は、それほど多くはなかったです。ただ、年間を通して上に行くには、(今日のような戦いで勝つのも)必要なことかな、と」(川崎/家長)

 王者に真っ向勝負を挑むなかで、交代カードも生きた。

 後半26分には、交代出場の瀬川祐輔がカウンターの起点となって、遠野大弥がGKと1対1になり、ファウルでPKを得る。家長が蹴ったキックは、GKに止められた。だがその後も前がかりになって、勢いを加速させる。交代出場の瀬川からのバックスピンがかかったパスに、同じく交代で入ったDF大南拓磨が右サイドを走り込んで折り返し、DF車屋紳太郎が中央に突っ込んで決勝点を叩き込んでいる。総攻撃が実を結んだ形だ。

「監督からも『下がらず攻撃的に』と言われていたので。相手の足も止まっていた時間帯で、(裏に走って)結果につながって良かったです。90分間、ゼロに抑えるなかで、あそこまで(車屋が)詰めてくれるのはさすがだなという感じ」(川崎/大南拓磨)

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