FC東京は監督交代で攻撃的になるか カギは相手ボール時の対応と渡邊凌磨の多機能性 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

【CFとCB以外ならどこでもプレー可能】

 だが、それでも渡邊は後半39分までプレーした。後半15分という早い時間にベンチに下がった俵積田とは対照的な姿を描いた。前戦の名古屋戦で渡邊は後半40分までプレーしている。クラモフスキー新監督からの信頼は厚そうに見える。

 何と言ってもボールに対する反応が早い。ポジションワークがボールの動きと一体化している。対応の幅、プレーの適性は広範にわたる。実際、この柏戦でも後半の頭から、塚川孝輝と4-2-3-1の1トップ下にポジションを入れ替わっている。前戦の名古屋戦も1トップ下での先発出場だった。

 今季、アルベル監督のもとでは左ウイングとしての出場が最も多かった。ディエゴ・オリヴェイラを真ん中に、左・渡邊、右・仲川輝人という配置が定番だった。仲川が柏戦を前にケガで離脱。そこで渡邊が左から右に移動し、左に俵積田が入ったわけだが、ここで浮き彫りになるのは右も左も苦にしないその多機能性だ。

 仲川は左もできなくはないが、右の方が断然、得意そうだ。俵積田も、三笘がそうであるように適性は左にあると考えられる。左右両方できる渡邊はそうした意味で貴重な存在だ。さらに言えば、アルベル監督が使用した4-3-3のもとではインサイドハーフとしてもプレーしている。両サイドバックとしてプレーした経験もある。1トップとセンターバック以外ならどこでもプレーすることが可能である。

 想起するのは、渡邊が前橋育英高校2年生の時に出場したU-17W杯(2013年、UAE)だ。時の吉武博文監督は多機能性を育もうと、選手を毎試合、異なるポジションで起用。見る側をアッと言わせる斬新なサッカーを大舞台で披露した。渡邊はそこから生き残ってきた選手らしいプレーをする。

 スペシャリスト特有の切れ味はない。対峙する相手を高い確率で抜き去る、切れ味鋭い派手なドリブルがあるわけではない。地味と言えば地味だが、一方で欠点は少ない。総合的能力が高いクレバーな選手と言い換えることができる。技術的には細かなタッチに優れる。左右両足でボールを軽やかなタッチでうまく止める。

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