イニエスタがJリーグに与えてくれたもの 福田正博が子どもにマネしてほしいプレーとは (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Fujita Masato

【子どもたちがマネをしたプレーとは】

 もちろんプレーヤーとして、イニエスタは広い視野からのパスとゴール前へと走り込むダイナミックな動き、技術の高いボールテクニックと創造性に富んだプレーを何度となく見せてくれた。

 こうした彼のプレーを、未来の日本サッカーを担う多くのサッカーキッズたちがマネした。代表的なものとして、子どもたちが試合中に盛んに首を振って周囲の状況を見るようになった。足元の技術に注目が集まりがちななか、こうした基本の動作はぜひマネしてほしいプレーであり、その大切さを再認識させてくれたのは大きい。

 見栄えのする派手なプレーではなく、ともすると地味な部分がクローズアップされ、そこをマネする子どもが増えた背景には、イニエスタの身長が171cmと大きくなかったこともあるだろう。

 実際には体に厚みがあって、フィジカルもしっかりしているからこそ、世界のトップ・オブ・トップで活躍できたのだが、それよりも身長が高くないことが日本人の共感を呼んだのだと思う。

 また、「バルセロナル化」というものの難度が、相当高いという認識を日本に知らしめてくれたのも、イニエスタがJリーグでプレーしたからこそ。

 日本には、ジョゼップ・グアルディオラ監督時代のバルセロナが展開したサッカーが好きな人が今も多いのではないか。リオネル・メッシやイニエスタ、シャビなどの大柄とは言えない選手たちが、連動しながらパスで相手を崩していくサッカーは、同じように体格に恵まれない日本人にとって参考にすべきものだからだ。

 しかし、それと同じようなチームを構築するのは容易ではないことが理解できた。神戸がイニエスタのほかにビジャやセルジ・サンペールなどを擁しながらも実現できなかったからだ。

 グアルディオラが指揮をした当時のバルセロナのようなサッカーは、イニエスタのようなスキルと技術とサッカー観を持った選手がフィールドに8割以上必要だろう。そのうえで、ゴール前で違いの出せるメッシのような存在もいた。だからこそ、世界中の多くの人たちを魅了したのだ。

 バルセロナ化は絵に描いた餅になってしまったが、イニエスタを獲得して、そこにチャレンジした神戸の姿勢は評価したい。彼らが目標を掲げてそこに向かって突き進まなければ、2018年以降のJリーグが厳しい状況に置かれていたのは間違いないだろう。

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