ゴールキーパーなのにハードワーク? J3からJ1まで全カテゴリーを経験してきた上福元直人の「プロで生き残る道」 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【新たな風を吹かせるGK】

 リーグ戦で川崎のゴールマウスを守るようになって8試合が過ぎた。上福元のプレースタイルを理解し、それを生かそうとチームメイトが会話してくれている姿に、自信を深めている。未来を思い描き、逆算してきた彼が見据える先はどこにあるのだろうか。

「『大砲理論』というのを聞いたことがあって。自分が到達したいところを目標に設定してしまうと、そこに達することはできないという考えみたいです。大砲は途中で失速していくから、目標よりも遠い地点に狙いを定める。それと一緒で、自分が目標とするところよりもさらに先を見ることで、本来、目指しているところに到達することができるという話を聞いて、なるほどなって思ったんです」

 決して座右の銘やモットーではないというが、彼はその話を聞いて目標を「日本一」ではなく、さらに先を見据えるようにしていると教えてくれた。J1のタイトルも見たい景色ではなく、見るべき景色であり、彼にとっては通過点に過ぎない。

 その言葉や考えは、GKというよりも、フィールドプレーヤーと話しているような感覚だった。1-0でチームが連勝したJ1リーグ第17節のサンフレッチェ広島戦。GKの本来の仕事であるセーブで、チームをたびたび救う上福元の姿があった。

 他者にはない自身だけのスタイルを磨き上げ、川崎へとたどり着いたGKは、チームに新たなる風を吹かせている。前へと進もうとする追い風は、チームに新たな可能性を示している。

<了>


【profile】
上福元直人(かみふくもと・なおと)
1989年11月17日生まれ、千葉県千葉市出身。市立船橋高→順天堂大を経て、2012年から2017年まで大分トリニータに在籍(2013年に2カ月、当時JFLのFC町田ゼルビアへ期限付き移籍)。その後、東京ヴェルディ(2018年〜2019年)→徳島ヴォルティス(2020年〜2021年)→京都サンガF.C.(2022年)とJ3からJ1まで各カテゴリーでプレーし、2023年に川崎フロンターレに完全移籍。ポジション=GK。身長182cm、体重76kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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