伊藤涼太郎が演出したワクワクするゴールシーン ファンタジスタの国内プレーももうすぐ見納め (2ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko
  • 西村知己●イラスト illustration by Nishimura Tomoki

Answer 
谷口海斗がダイアゴナルランで中央のギャップに走り、伊藤涼太郎がスルーパス

 新潟がようやく相手のライン間でボールを受け、いい形で起点を作ることができたシーンだった。

谷口海斗が中央でダイアゴナルラン。そこへ伊藤涼太郎がスルーパスを通した谷口海斗が中央でダイアゴナルラン。そこへ伊藤涼太郎がスルーパスを通したこの記事に関連する写真を見る 湘南は守備時に5-3-2の形となり、2トップのプレスから中を締めてサイドにボールの流れをおびき寄せ、ウイングバックのところで詰まらせるというのが狙いだった。湘南の泣きどころとなるアンカーの奥野耕平の脇を使われても、3バックが迎撃してうまく対処していた。

 しかし、このシーンでは左サイドハーフの小見が中に入り、奥野の背後のライン間でボールを受けると、湘南・杉岡大暉の寄せが甘くうまく前を向くことができた。

 この起点がポイントとなった。小見がボールをそのまま運んでいくと、球際に小野瀬も寄せてきて、それを引き寄せてからパスを出す。これで伊藤がフリーとなって、いい形でボールを持つことができた。

 この時湘南は、フリーの伊藤に対して中に絞った髙橋直也が出ていくしかなかった。しかし、逆サイドは湘南の石原広教に対して、新潟は田上大地のオーバーラップで、谷口と2人で数的優位を作れていた。ここも大きなポイントだ。

 そのため髙橋が釣り出されたギャップに谷口が走る時、石原は難しい対応を迫られた。中に絞れば田上がフリーとなり、サイドをえぐられてしまう。一瞬の迷いがあったなかで田上のケアを選択した。

 しかし次の瞬間、それを上回ったのが伊藤だった。伊藤は体を開いて田上へのパスを見せながら、谷口へ絶妙なスルーパス。谷口は冷静にコントロールし、ゴールへ流し込んで同点とした。

 ベルギーのシント・トロイデンへの完全移籍を発表した伊藤は、次節の京都サンガF.C.戦がラストゲームとなる。この試合でも2アシストを決めた伊藤がラストにどんなプレーを見せてくれるのか、注目である。

◆【動画】Jリーグ第16節 湘南ベルマーレvsアルビレックス新潟 ハイライト
(新潟の1点目のシーンは、2分25秒~3分12秒)

プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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