イニエスタがガビに要求したユニフォーム 「バルサはかくあるべし」と伝えているかのようだった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【シャビ「スペイン史上最高の選手だ」】

 後半も、イニエスタは相手が寄せてきたら外し、展開するというプレーをやってのけた。その間合いの使い方は、名人の居合抜きに近い。だからこそ、不世出の選手なのだ。

「イニエスタはベテランだが、技術は失われていない。今日も、一度たりともボールを失わなかったんじゃないのか。スペインサッカー史上最高の選手だ」

 バルサを率いるシャビ・エルナンデス監督は、最高の賛辞を送っている。

 81分、交代で退いたイニエスタに、バルサ時代の戦友だったシャビ監督が近づき、熱い抱擁を交わした。言葉以上のメッセージ性があった。イニエスタの"愛されるサッカー人生"が濃縮されていた。

――Jリーグ、日本サッカーに何を残したと思いますか?

 記者会見での質問に、イニエスタはこう答えている。

「うーん、わからないな。ピッチ内外でのプロフェッショナルの姿勢かな。でも、私はたくさんの愛情を皆さんからもらったし、すばらしい経験をすることができました」

 彼は最後まで謙虚で、少しの驕りもなかった。そして彼が示したサッカーは、バルサの若手にも最高のレッスンになったはずだ。

「ボールを持っていれば、失点しない。ゴールに迫るだけだ」

 バルサ、ラ・マシアの原点であるフィロソフィを高らかに示した。「バルサはかくあるべし」。その道筋と言えばいいだろうか。

 この試合でプレーメイクを担当したMFパウ・プリムは、日本で言えば高校2年生で、ユースBチーム所属だが、イニエスタの技に触発されたようだった。ジョゼップ・グアルディオラ、シャビ・エルナンデス、セルヒオ・ブスケツの系譜を継ぐ。優れたビジョンと技量を用い、ダイレクトで迅速に次のプレーを促し、プレー方向を変えて展開を広げ、ラインを越えたパスを果敢に突き刺した。

 もうひとり、右アタッカーに入った17歳のダニ・ロドリゲスは、ハーフタイムに積極的にイニエスタに話しかけ、興奮気味だった。左利きで俊敏で、複数のアイデアがあり、スピードのなかで技術を使えて守備を崩せる選手だ。

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