平畠啓史さんがJリーグ30周年で振り返るマスコットたちの活躍「世界に通用する日本のサッカー文化だと思います」 (3ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • 千田純生●イラスト illustration by Chida Junsei

【マスコットの曲を作ってほしい】

――マスコットのキャラクターは、Jリーグの歴史のなかでどんどん濃くなっていきましたよね。

 マスコットの内面が特徴的なのは、ベガッ太(ベガルタ仙台)やヴァンくん(ヴァンフォーレ甲府)やヴォルタくん(徳島ヴォルティス)たちですよね。マスコットの所作やキャラクターが特徴的で、そういうマスコットがいるのは本当に面白いなって思います。そういうのが定着してきて、ベガッ太には、いたずらされてもなんか笑えるんですよね。

――確かに2000年代に入ってから、よりマスコットたちのキャラが強くなっていった気がします。

 エポックメイキングだったのは、キヅール(いわてグルージャ盛岡)ですよね。マスコット業界の革命ですよ。あの直線的なフォルム!

 先にイラストでキヅールを見ていていざ立体化させますという話になった時、みんながそれぞれ妄想していたなかで、実際にお披露目までの期待感を作っていく流れもすばらしかった! そしていざキヅールがお披露目された時の衝撃! 羽の広がりや背の高さは、ゆるキャラの概念のまったく逆を行く感じで出てきたのが、Jリーグの歴史のなかでも革命的だったと思うんです。

 キヅールに初めて会った時は、めちゃくちゃうれしかったのを覚えています。もはや神々しくて、ひれ伏してしまいそうな感じでした。キヅールは足も速いしボールも蹴れる意外性も持っている。ちゃんと盛岡藩主南部氏の家紋の歴史も踏まえているということもすばらしいですよね。

――今後のマスコットに期待していることがあれば教えてください。

 ブラウブリッツ秋田と大分トリニータの試合で、どちらもダイハツがスポンサーということで、ダイハツのカクカクシカジカがブラウブリッツ秋田に加入するというニュースが出てましたよね。

 Jリーグのマスコット同士で戯れるのもいいですし、外部のマスコットと触れ合うのもいいなあって思うんです。違うスポーツのマスコットと触れ合うのもいいと思いますし、誰かミュージシャンのライブに出演したりしてもいいですよね。そうすることで初めてJリーグのマスコットを見る人たちも増えて、そこからJリーグに興味をもってくれる人が増えていったらいいなぁというのがあります。

 マスコットがいないクラブもありますが、無理して作る必要もないと思います。でもいろんな仲間が増えていったらうれしいですよね。一平くんのように非公認もいいと思います(笑)。サポーターが勝手に考えたマスコットに変装して、応援するとかもありなんじゃないでしょうか。

――私はマスコットに『マジ歌選手権』をやってほしいなと思っています。既存の曲を歌うフリをしたり、手拍子を叩くだけでもマスコットって味が出せるじゃないですか。

 僕は、アーティストの誰かにJリーグのマスコットの曲を作ってほしいなって思うんです。それに全マスコット統一の振り付けがあるといいなと。既存の曲ではなくて、Jリーグのマスコットだけが踊れる曲を作って、ふだんはそれぞれで踊っているんだけど、スーパーカップのような時にみんなで一緒に踊る。

 今、僕はマスコット運動会にも関わっているので、そういうのはやってほしいなって思うんです。それがあれば地域の幼稚園に行った時などに一緒に踊れますよね。そうやってファンを増やしていくことも大事かなと。

平畠啓史 
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気で、多くのサッカー関連番組に出演中。「平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)など、サッカー関連の著書も多い。

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