平畠啓史さんがJリーグ30周年で振り返るマスコットたちの活躍「世界に通用する日本のサッカー文化だと思います」 (2ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • 千田純生●イラスト illustration by Chida Junsei

【個性豊かなマスコットたち】

――Jリーグのマスコットを最初に見た時はどんな感想を持ちましたか。

 最初に見た時から30年経った今でも、グランパスくん(名古屋グランパス)やパルちゃん(清水エスパルス)は鮮度が全く変わってないのがすごいですよね。建物でも30年経ったら老朽化したりしますが、マスコットたちは全然鮮度が落ちない。

 あと、30年経ってどんどん仲間が増えていってるのもすごい。グランパスくんには、グランパコちゃん、グランパスくんJr.、グララちゃんがいます。パルちゃんには、こパルちゃんがいて、ピカルちゃんという彼女もできました。仲間が増えたり、マスコットのなかでどんどん展開していってるストーリーも、Jリーグの歴史のおもしろさのひとつだと思っています。

 オリジナル10で言うと、マリノス君(横浜F・マリノス)がいつもベンチの横で選手たちと一緒に座っていて500試合を達成した。それって大偉業ですよね。これ、Jリーグ的に言えばJリーグアウォーズで功労賞の表彰されるぐらいの試合数なんですよ。マリノスの歴史で何かわからないことあったら、マリノス君に話を聞くのが一番早いのかなって(笑)。

――オリジナル10のマスコットたちはアメコミタッチというか、アメリカンスポーツのマスコットっぽいところがありましたよね。近年は日本らしいマスコットというか、本当にかわいいマスコットが増えました。

 日本でゆるキャラがたくさんできてから、また少し流れが変わった感じがします。丸みを帯びたかわいいマスコットが増えました。

 ヴィヴィくん(V・ファーレン長崎)やニータンはその代表格でしょうか、文句なしにかわいい。ヴィヴィくんは長崎のスタッフもちゃんとみんなヴィヴィくんとして接しているところが非常にいいなと思っています。スタッフが全然業務っぽい感じを出していない。それが僕は大好きです。

 さらにヴィヴィくんにはチャントもあって、試合前にサポーターのチャントでヴィヴィくんが飛び跳ねてる光景はサッカーに興味がない人でも、平和でよい光景だなと感じると思います。

 ニータンは動きがすごくのろまで、台車で運ばれたりします。マスコット界や人間界でも動きが遅いことはデメリットと思われがちですよね。でもニータンはのろまなのがニータンのかわいさを生み出しています。それが泣けてくる。

 マイナスなことも特徴になるよって、人間界に訴えてくれてるなと思うんですよ。学生の時に足が遅いとか、背が低いとかって悩むことあるじゃないですか、でもニータンを見てください、そういうのが特徴になってみんなに愛されていますよと。だからニータンは本当に深いなって思います。

 ニータンの大きいぬいぐるみを、サポーターがスタジアムに連れて行ってるじゃないですか。あれは、もう一人分の席代を払う必要があるんですよね。一人分というかニータン分ですね。それをやっているサポーターの気持ちって、本当にすごいなって思います。

――ニータンはマスコット界でも存在感が大きいですよね。

 ニータンがAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』のMVに出た時はめちゃくちゃうれしかったですよね! あれって大分トリニータのファン・サポーターだけじゃなくて、Jリーグファンはみんなうれしかったんじゃないかなと。

 個人的なことを言うと、ニータンの写真集は自分で買っています。関係者やニータンからもらうとかではなく、ネットで申し込んで買いました。大分の練習場に行った時にそれにサインをもらいました(笑)。

――完全にガチ勢じゃないですか(笑)。

 自分でもちょっとイタいとは思っています。でもマスコットを前にした時ってやっぱり童心に帰れるんですよね。

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