ヴィッセル神戸、横浜F・マリノスほかJリーグ序盤好調の4チームを福田正博が分析「今年の大迫勇也は本来の輝きを放っている」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
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【ボランチがチームを躍動させている】

 その神戸に勝利して昨季のJ1王者らしさを見せた横浜FMは、神戸戦を迎えるまでは試合内容と結果が噛み合っていない印象だった。それが神戸戦で2点のリードを許しながら追いつき、追い越したことで、ここから乗っていくのではと感じている。

 神戸戦で2得点を決めたアンデルソン・ロペスは、ここ3試合で5得点。リーグ戦序盤のチームのもたつき感の要因にもなっていたが、決めるべき選手が決めるようになったことで、今後は勝ち点3を積み上げていくと予感させる。

 見逃せないのがボランチの喜田拓也と渡辺皓太だ。彼らの働きは大きく、ふたりがいなければリーグ戦序盤にもっと負けが増えていても不思議はなかった。

 それだけに、彼らふたりが試合に出続けられるのか。そこが横浜FMにとっては重要なポイントになる。累積警告や故障などで欠くようだと、ベンチに力のある選手が控えているとはいえ、チームの中核が変わるとチーム全体のリズムが狂う危険性はある。

 ボランチがチームを躍動させているのは、名古屋グランパスにも当てはまる。2年目を迎えた長谷川健太監督のもと、9試合を終えて5勝3分け1敗で2位。総失点はリーグ最少の5失点。この堅い守りをベースにしながら、堅守速攻のサッカーで勝ち点を積み上げている。

 攻撃は、浦和レッズから移籍したキャスパー・ユンカーを1トップ、その下に置く永井謙佑とマテウス・カストロの3選手でゴールを狙うのが基本線。ボールを奪ったら縦に早くパスを出し、前線3人のスピードを生かす。相手にすれば脅威を覚える。

 DFラインはサンフレッチェ広島から野上結貴を獲り、日本代表経験者の中谷進之介と藤井陽也で3バックを敷く。もともと守備は堅かったチームだが、より堅固にしている存在が、今季チームに復帰したボランチの米本拓司だ。

 ボールを奪いに行く圧力の高い米本がいることで、守るための守備だけではなく、攻撃に転じるための守備もできるようになった。このためボランチのコンビを組む稲垣祥の攻め上がる機会は増え、そこからゴール前でのシュートチャンスをつくれている。

 名古屋は今後も負ける試合は少ないと思う。だが、優勝するためには引き分けではなく、勝利をいくつ重ねられるかが重要で、そのための課題は得点力だ。

 堅守速攻でシュートチャンスはもともと多くない。それを前線3人のクオリティでカバーして2位につけている。ただ今後は、相手に対策を練られることは想定され、その場合にどう打破するのか。

 そのひとつがマテウスのFKだろう。昨季8ゴールでチーム最多得点だったマテウスは、今季初ゴールを4月15日の川崎フロンターレ戦でFKから決めた。

 強烈で精度の高い彼のFKは大きな武器。それだけにマテウスが何本かFKからゴールを奪えれば、相手DFはマテウスのFKを警戒してゴール前での寄せは少し甘くなる。そうした状況をつくれれば、勝ち点3を積み上げていけると思う。

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