川崎フロンターレと鹿島アントラーズに優勝の目はまだあるのか 福田正博は「負け数のリミット」を分析した (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kishiku Torao

【鹿島はほかのクラブが持ち得ない強みまで手放す必要はない】

 負け数で言えば、川崎よりひとつ多いだけだが、チーム状況でもっと苦しいところにいるのが鹿島だ。

 昨季の課題だったセンターバック陣に昌子源と植田直通が復帰し、攻撃的なポジションも補強したことで開幕前は優勝候補の一角と見ていた。しかし、蓋を開けてみれば期待を裏切られる結果になっている。

 鹿島の難しさは、故障者続出で戦力の整わない川崎とは違い、選手が揃っているのに結果につながっていない点にある。チームとして規律正しくアグレッシブに戦っているものの、結果につながっていない。

 今季の鹿島を象徴した一戦と感じたのが、4月19日にあったルヴァンカップでのアビスパ福岡戦だ。ミッドウィークに行なわれるルヴァンカップでは、リーグ戦でベンチを温める選手をスタメン起用するケースが少なくない。この試合の鹿島もスタメンにはリーグ戦のベンチ組が多く名を連ねた。

 試合は前半14分に福岡に先制されたが、前半31分にアルトゥール・カイキのゴールで振り出しに戻したものの、後半48分に福岡に決勝ゴールを決められた。気になるのは、試合終了間際の勝負強さこそが鹿島の伝統だったはずなのに、それが見られないばかりか、相手に勝ち越しを許したことだ。

 なにも1試合の結果だけを取り上げて言いたいのではなく、ここまでのリーグ戦を含めて、勝利に対する鹿島らしさは見られない。Jクラブの多くがスタイル転換を模索する潮流にあって、鹿島も変えつつあるが、変化を優先するあまり自分たちが築いてきた伝統やアイデンティティーを見失っているように感じられるのだ。

 サッカーのスタイルを時代に合わせて変えるのは悪いことではない。だが、ほかのクラブが持ち得ない強みまで手放す必要はないはずだ。

 鹿島が常勝クラブになれたのは、勝利に対して柔軟で貪欲な姿勢があったからだと思っている。主導権を握れば相手を焦らすようにノラリクラリと戦ってみたり、試合内容で相手に押されっぱなしでも粘り強く戦って、終わってみたら勝利は鹿島が手にしていた。

 こうしたジーコによって植えつけられ、Jリーグ30年のなかで培ってきた強みは、鹿島しか持っていないもの。ほかのクラブが望んでも手にできないものだけに、どういうサッカーを志向しようとも、鹿島らしさは大事にしてもらいたいと思う。

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