「サイドバックであり、ウイングであり、そしてストライカー」浦和レッズの快進撃を支える酒井宏樹と興梠慎三 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

【柏のホームに立った酒井宏樹】

 このゴールをきっかけに勢いに乗った浦和は、後半にも2点を加え、3-0と敵地で柏を一蹴している。

 浦和のマチェイ・スコルジャ監督は、36歳のストライカーのパフォーマンスを手放しで称賛した。

「浦和の将軍と言ってもいいと思います。今日はいい仕事をしましたけれど、日々のトレーニングでも彼はハードワークを見せている。慎三は周りに信頼されている選手です。今季のファーストゴールが生まれましたが、これは絶対にラストゴールではないと思っています」

 開幕2連敗と出遅れたものの、興梠がスタメンに名を連ねてからは破竹の4連勝。浦和の躍進はこのベテランの存在と無関係ではないはずだ。

 興梠の得点シーンを振り返れば、関根のクロスの先にいたのは酒井宏樹だった。右サイドバックが流れのなかからエリア内でクロスに待ち構えていたのである。その立ち位置こそが、今季の酒井の進化だろう。

 ポジショナルプレーが主流となってきた現代サッカーにおいて、サイドバックがウイングやボランチのように振る舞うことはもはや、当たり前の光景となっている。しかし、あれだけ高い位置で中に絞るプレーは、早々お目にかかれない。この日の酒井はサイドバックであり、ウイングであり、そしてストライカーでもあったのだ。

 先制点の場面を、酒井は「何があっても点を取るつもりでいました」と振り返る。

「慎三さんが決めてくれたのでよかった。僕だったら外していたかもしれないので。ただ、あそこにいることが大事だった」

 相手を引き寄せる囮(おとり)の動きが、興梠の先制点につながったと考えれば、酒井もまたこの日の勝利の立役者のひとりである。

 もちろん、持ち前の対人守備の強さは健在で、自慢の高さはクロスを跳ね返すのみならず、ゴールキックやセットプレーのターゲットとしても重要な役割を担っていた。

 柏から世界に飛び立った酒井にとって、2021年にJリーグに復帰して以来、古巣のホームスタジアムでプレーするのは初めてのことだった。

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