宇佐美貴史「落ち込むとか絶対やっちゃいけない」 ガンバ大阪、いまだ未勝利の現状をどう見るか 広島とはチーム完成度に差 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

【「個人」の能力は高いが...】

 前半、G大阪はほとんど押し返せていない。シュートも数えるほど。横パスが多く、ポゼッション率は上がったが、ゴールに迫る怖さは乏しかった。

 ただ、サッカーは気まぐれなところがある。

 広島は後半開始から選手を交代し、1トップに変えたことで、前への圧力が減った。チームデザインは不明瞭になり、形勢が逆転。反撃するしかないG大阪の攻撃に、受け身に回った。

 その途端、G大阪のエースである宇佐美貴史が躍動した。ライン間でパスを引き出し、それをワンツーで持ち込み、エリア内に正面から迫る。どうにかクリアされたボールを味方がミドルを打つと、押し込む形で破竹の勢いとなった。

 69分、左に流れてボールを受けた宇佐美は、スピードを殺すことなくエリアに向かってドリブルを開始。一気にエリア内に侵入し、立ち塞がったひとりを外し、二人目がブロックしてくるのを構わず右足を強く振ると、ボールはそのままゴールネットを揺らした。単騎での打開だった。

「相手はマンツーマン気味に来ていましたが、後半になって(動きが)落ちてきて、いい時間帯になって、1点とることができた。あそこでたたみ掛けることができたはずで。2、3点目をとれなかったところが勝てない要因かな、と。終盤、相手に決勝点を決められたのは、主導権を渡してから生まれたもの」(G大阪/宇佐美)

 広島は選手交代のカードを切って2トップに戻すと、流れを再び引き寄せた。後半から送り出した選手(松本泰志)を下げる決断は簡単ではないはずだ。彼らはその賭けに勝ったわけだが、即、機能したのはチームの戦術的基盤のおかげだろう。

 G大阪は、宇佐美だけでなく「個人」が能力の高さを示した。21歳の半田陸は、プレスを受けながら展開するキックや、鈴木武蔵へのシュートに直結する縦パスなど、随所に非凡さを見せている。サブやメンバー外の陣容を見ても、下位に沈む戦力ではないはずだ。

 ただ、戦力や戦術の整合性が見えないのだ。

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