サッカーの奥深さがわかる。福西崇史が現役時代「味方でよかった」と思う選手ベスト5 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki
  • photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

 そこに、駆け引きが加わってくるのが、名波さんですよね。一緒にプレーしていると、「うわっ、誘ってる!」っていうのがわかります。

「誘ってる」っていうのは、たとえば(相手が)ボールをギリギリ取れるか、取れないかっていうタイミングで出すんです。相手選手はボールを取れなかったら、めちゃくちゃリスクがあるんだけど、取れそうだから行ってしまう。これが相手にとっては一番嫌なんです。

 僕はジュビロ磐田で育っているから、名波さんが誘っているのがわかりますけど、これを知らずにやられると、うわーって頭を抱えるやつですね(笑)。僕は名波さんと(公式戦で)敵として対戦したことはありませんが、ジュビロで紅白戦をやるのは本当に嫌でしたから。

 2ボランチを組んだ選手で一番やりやすかったのは、ヤットか、名波さん。このふたりとはプレーのことで話し合うことはほとんどないのに、何をやりたいかをわかってくれていたので、非常にラクでした。

 僕はプロになったばかりの頃、そこまで確立したサッカー観っていうものはなかったけれど、名波さんとか、ドゥンガとかに少しずつ成長させてもらい、やっと伸びてきたところに(遠藤や小野らの)黄金世代が出てきた。「あいつら、スゲーな」と思いながらも、一緒にやっていると感覚が同じだということがわかるし、言葉をかわさなくてもやりたいことがお互いにわかるので、すごくやりやすかったです。

「言葉をかわさなくてもわかる」という意味では、後ろの選手も同じ。守備について言えば、味方でよかったと思うのは、服部(年宏)さんですよね。

 僕は、自分と相手との状況が100対100の時には勝負せずに、相手が50になった時を狙ってボールを取りに行くタイプ。周りを使って、その状況をいかに作るかが重要なので、後ろにめちゃくちゃ負担をかけるボランチだったんです(苦笑)。

 服部さんだけでなく、鈴木秀人さんとか、田中誠さんとかもそうですけど、彼らのおかげで僕の負担を減らしてもらえる。あの人たちは僕のところに(相手を)呼び込んで、僕が(相手の動きやパスコースを)限定さえできれば、自分たちでボールを奪ってくれるんです。

 そういった選手たちは何も言わなくても、僕の意図をわかってくれている。そして、必ずいてほしいところにいてくれる。

 サッカーって、本当に奥が深いですよね。ボールを奪ったら、その奪った選手がスゴいっていう話になりがちですけど、本当は「誰がその環境を作ってくれたの?」っていうところまで見なければいけない。

 僕にとっては、それをしてくれたのが、ここに挙げた選手たちということです。

福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ。愛媛県出身。1995年、新居浜工高卒業後、ジュビロ磐田入り。FWからボランチにコンバートされると、すぐにレギュラーを獲得。以降、主力選手として数々のタイトル獲得に貢献した。日本代表でも活躍し、2002年日韓W杯、2006年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ出場64試合、得点7。現在はサッカー解説者、指導者として奔走している。

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