移籍状況で今季戦力ダウン必至のJ1クラブを識者3人が指摘。現状維持や主力の流出で大丈夫か (3ページ目)

  • photo by Getty Images

【昨シーズンの2強に上積みなし】

戦力ダウンクラブ/横浜F・マリノス、川崎フロンターレ、浦和レッズ

浅田真樹(スポーツライター)

 まだ今季開幕前の移籍市場が閉じたわけではないとはいえ、現時点で最も移籍補強に物足りなさを感じるのは、昨季王者の横浜F・マリノスだ。

 昨季MVPのDF岩田智輝を筆頭に、FW仲川輝人、FWレオ・セアラと、実力者がチームを離れた一方で、J1主力級の補強は、柏レイソルからDF上島拓巳を獲得するにとどまっている。

 3季ぶりの王座奪還をきっかけに、さらなる豪華補強で最強軍団を盤石なものにしてほしいという期待を持っていたが、シーズンオフの動きはかなり控えめだ。

 昨季の横浜FMは圧倒的な選手層の厚さを誇り、メンバーをうまく入れ替えながらJ1を制しているだけに、多少の戦力流出が大きなチーム力低下を引き起こすわけではないだろう。今季も間違いなく優勝候補のひとつではある。

 とはいえ、あくまでも昨季との比較で言えば、戦力ダウンと考えるのが自然だろう。

 同じことは、昨季2位の川崎フロンターレにも言える。

 何より大きいのは、最終ラインの要であり、キャプテンでもあるDF谷口彰悟の海外移籍だ。言うまでもなく、単にレギュラーセンターバックがひとり抜けたということ以上に重大な意味を持つ戦力流出である。

 近年、主力選手が相次いで海外移籍や引退で抜けていった川崎にあって、それでもこれだけの強さを維持し続けられたのは、谷口のリーダーシップによるところが大きかった。最後までチームを支え続けた大黒柱。そんなイメージだ。

 もちろん、川崎には現有戦力に実力者が揃っており、ただちに成績が急降下するとは考えにくいが、圧倒的な強さでJ1を制した2020年シーズンをピークに、チーム力が徐々に下降線をたどっていることは間違いなく、そこに歯止めをかけられていないように見える。

 いずれにしても、横浜FMも含めた昨季2強がさほど積極的な補強に動いていない以上、今季J1の優勝争いは面白くなるのではないだろうか。

 そのほか、目立って補強に苦労しているクラブは見当たらないが、正直、判断が難しいのが浦和レッズだ。

 FWキャスパー・ユンカー、MF江坂任が抜けた穴は決して小さくないばかりか、MF松尾佑介、DF岩波拓也も去就がはっきりしない状態にある。

 しかも、現段階での移籍補強が活発とは言い難いうえ、マチェイ・スコルジャ新監督がどんなサッカーを志向するのかわからず、新外国人選手を含めた新戦力が、その方向性にかなったものなのかも見極めにくい。

 ここ5年ほどは頻繁に監督が交代し、その度に目指すサッカーが変わり、選手が入れ替わってきたことを考えると、現状に不安がないわけではない。

【筆者プロフィール】
中山淳(なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。

【筆者プロフィール】
小宮良之(こみや・よしゆき)
スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

【筆者プロフィール】
浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967年生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

◆【画像・写真】2023年注目のサッカー界のドラ1選手たち

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る