W杯でも議論となった「PKは運ではない」を実証。鎌田大地も成し得なかった日本一へ、京都・東山が「平常心」で決勝に挑む (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●写真 photo by Kishiku Torao

【負けたら終わりの場でも冷静】

 ところが後半に入ると、東山が流れを掌握する。ポイントとなったのはハイプレスだろう。高い位置でのボール奪取が増え、大津を自陣へと押し込んだ。

 加えて東山には、セットプレーという武器があった。次第にこの機会が増えていくと、63分にはCKから松橋が起死回生の同点ゴールを奪取。その後も東山が押し込むも、大津はカウンターから決定機を作り出すなどお互いに勝ちきるチャンスはあったが、ともに決定打を欠き、勝負はPK戦へと委ねられた。

 そして、ここで力を発揮したのが、東山の選手たちだった。

「PKは運」

 先のワールドカップでも議論となったテーマだが、東山のPKを見ていると、決してそうばかりとは言えないことが理解できる。もちろんワールドカップとはレベルの違いはあるとはいえ、狙った位置に力強いキックを蹴ることができれば、そう簡単に止められることはないのである。

 PKの成功率を高めるために求められるのは、正確なキックを蹴ることのできる技術に加え、プレッシャーに屈しない精神力だろう。堂々とPKを蹴り込む東山の選手たちには、そのメンタリティが備わっているように感じられた。

「初めての国立で緊張があったり、動揺があったりということを不安視していたんですが、立ち上がりからすごく落ち着いて、いいゲーム運びができました」

 東山の福重良一監督は、満足げな表情で試合を振り返った。

 指揮官が選手たちに求めているのは「平常心」だという。もちろん、平常心でプレーすることは簡単ではない。負ければ終わりとなる高校サッカーの集大成の場であれば、なおさらだろう。しかし、東山の選手たちはそんな大舞台でも、落ち着いているように見えた。

 キャプテンのDF新谷陸斗(3年)は初めての国立でのプレーを「めちゃめちゃ緊張しました」と振り返ったが、「硬くなっても自分たちのよさを出せないですし、平常心で楽しむことによって自分たちの本来のサッカーが出せる。監督からそういう話をされていて、それを実現できたかなと思います」と胸を張った。

 2本のPKストップで勝利の立役者となった佐藤も「練習から厳しくやってきましたし、この国立でやることを目標にしてやってきました。そういう意識が平常心につながって、PK戦も全員が決めることができたと思います」と日常の意識の高さが、平常心につながったと強調する。

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