高校サッカーの名将・小嶺忠敏さん逝去から1年。教え子2人が監督として全国の舞台へ。「尊敬しかない」「運命を感じる」 (4ページ目)

  • 森田将義●文・写真 text&photo by Morita Masayoshi

【今でも鮮明に覚えている「光GENJI」の法則】

 小嶺さんはいい話があれば、飲み会の最中でも割りばしの袋にメモしていたという。厳しい指導のなかにそうして得たたくさんの知識を、選手に笑いを交えながら伝えていく。

 植田が今でも鮮明に覚えているのは、入学したばかりの頃に聞いた「光GENJIの法則」だ。「光GENJIは短い下積みでトップスターまで上り詰めたから、解散までも早かった。SMAPは出始めたばかりでしたが、下積みが長いから、息が長いぞという話をされました。まさにその通りになったじゃないですか。地道な作業と努力の重要性を教えてくれました」(植田)

 初出場を掴んだ今年は、植田が帝京第五の監督に就任して13年目に当たる。「すぐ勝っていたら調子に乗って、うまくいかないことがたくさんあったと思う。今年初めて勝っても別に浮足立つこともないし、地に足をつけている。それは13年間という下積みがあったから」(植田)。「光GENJIの法則」通り、予選決勝で何度も敗れ続けた下積みと言える時代を乗り越えた植田の今後は明るいはずだ。

 101回目を迎えた今回の選手権は、「NEXT1∞(ネクスト100)」をテーマに掲げ、次の100年へのスタートを切ったが、今なお高校サッカーには小嶺イズムは色づいている。新時代を迎えても、"小嶺先生"の指導には指導者や選手が忘れてはいけないものがある。

【筆者プロフィール】
森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。10代の頃から、在阪のテレビ局でリサーチとして活動。2011年からフリーライターとしてU-18を主に育成年代のサッカーを取材し、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿を行なう。

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