柏レイソルの象徴・大谷秀和が語る現役時代とこれから。「『ひと筋20年』は自分だけで十分」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Etsuo Hara/Getty Images

【レイソルの選手だと感じた瞬間】

「自分はレイソルひと筋20年で歩んできたけど、それは自分だけで十分という思いもありますよ。今は時代も違う。自分は海外も、代表も、ワールドカップも行けなかった。(酒井)宏樹や(伊東)純也のように、レイソルから世界に行って活躍する選手を目指してほしい。自分がつけた背番号7も、変なストレスを感じず、何かを背負う必要はないです」

 それは大谷自身が、自分らしさを貫いて生きたからこその言葉だろう。誰かの真似事ではなかった。

「次のキャリアをどうするか、まだ決めていません。監督に興味はありますが、それが本当に自分に向いているのか。みんなが言うから進む道ではなくて、気持ちが固まったら目指します。とは言え、いざとなったらライセンスが必要なので、取っておこうかなと(笑)」

 彼らしいスタンスだった。

――最後に、振り返ってレイソルの選手であることを一番感じた瞬間は?

 そう訊ねた時の彼の答えは鮮やかだった。

「12歳でクラブに入って、初めてレイソルのユニフォームを着た時ですかね。小6の時、少年サッカークラブでレイソルと対戦し、ベスト8で負けたんですが、すごく強く見えたんですよ。だから、自分がそのユニフォームの袖を通した、という嬉しい感覚を今も覚えています」

 黄色いユニフォームを纏うと、無敵感があった。彼はそのたび、誇り高さを感じ、全身全霊で挑んだ。そんな日々を繰り返してきた。

 レイソルひと筋で生きた男は、自ら幕を引いている。日立台で、家族、チームメイト、スタッフ、ファンに囲まれた彼の姿は晴れ晴れとしていた。落ちゆく太陽までもが門出を祝していた。

 来シーズン、大谷は柏のトップチームにコーチとして入閣することが決まっている。

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