ロアッソ熊本は「美しき敗者」。J1昇格を逃すも、京都サンガを上回った取り組み (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

真価を見せた同点ゴール

 簡単な連係に映るが、そこまでクオリティを高めるには、緻密で濃厚なトレーニングが欠かせない。シーズンを通じ、指導陣と選手たちが築いてきた信頼関係が透けて見えた。再現性のある開明的な「サッカー」で、京都を上回った。

「相手がボールを持ったときにチャンスを作られてしまい、自分たちがボールを持ったときは、緊張からかミスが多かった。それだけ勝ちたい気持ちが強かったのだと思いますが......」(京都・曺貴裁監督)

 一方、サッカーはもうひとつの側面を見せる。

 京都はコンビネーションで崩すよりも、選手個人の攻守におけるインテンシティが最大限に鍛えられていた。強い守備と攻撃に入った時の推進力など、強度が高かった。38分、先制点のシーンは象徴的だ。

 敵陣で2度、3度と、空中戦を制して自分たちのボールにする。すかさず裏にパスを入れ、熊本のディフェンスが反応したが、うまくクリアできず、これを受けた豊川雄太がネットを揺らした。単純に局面の高さ、強さ、スピード、決定力で上回った結果と言える。

「要所でなかなか押し込めず。"個"の強度の高さは感じました。すごくやられたわけではないけど、違いを感じたというか......」(熊本・イヨハ理ヘンリー)

 もっとも、これで「J1」に屈しなかったのが、熊本の真価だった。ポジション変更もしながら、しつこくボールを握り、攻勢に回る。57分にはターレスを投入し、攪乱。67分、攻勢で得た右CK、河原が鋭いボールをニアに蹴り、イヨハ理ヘンリーがフリーで入って、ヘディングをファーに飛ばす。これが同点弾になった。

 そしてアディショナルタイム、熊本はスリリングな試合の最後を盛り上げる。左CK、GKも攻め上がってこぼれたボールを、平川が2度に渡ってエリア内で狙う。しかし、ピーター・ウタカの顔面ブロックと右ポストに阻まれ、あと一歩及ばなかった。

「自分たちがやるべきことをやったら、そこは通用しました。あとは、押し込んで点がとれるか。(1年を通じて)やってきて楽しかったですが、球際はもっと強くならないといけないし、もう少しサッカーを知るのも課題です」(熊本・河原)

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