磐田に続く清水の降格は結果にすぎない。「サッカー王国の伝統」が静岡には見られなくなっていた (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Kyodo News

今季を象徴した清水の最終戦

 まさかの失点。もっといえばあり得ない失点を、清水は今季、繰り返してきた。試合運びがどのチームよりヘタなチーム。なんと言うか、勝ちパターンがない、ともすると情緒不安定に見える、珍しい体質のチームなのである。選手ひとりひとりのクオリティはJ1中位レベルにある。アシストランキングで3位タイに入った山原怜音、五輪代表チームで活躍が期待される松岡大起など、期待の若手もいる。

 そしてCFに控えるはチアゴ・サンタナだ。今季はケガで大きく出遅れ、25試合の先発にとどまったにもかかわらず14ゴールを決め、今季の得点王に輝いたJリーグナンバーワンストライカーである。

 先述の札幌戦でも、後半4分に叩き込んだ左足の同点弾は、まさしくスーパーゴールだった。チームはこれで勢いづき、その2分後に白崎凌兵の逆転弾が生まれると、清水は瞬間的に、自動降格圏を脱した。ところが情緒不安定な清水は、バタバタの展開に自ら足を踏み入れていく。同点弾を浴びたかと思えば、再逆転弾を叩き込まれるという今季を象徴する試合を繰り広げた。4-3という結果に驚きはない。

 ゼ・リカルド監督の采配にも大いなる疑問を覚えるが、この清水の体質は、今季に限った話ではないのだ。ここ数年続く慢性的なものといっても過言ではない。静岡といえば温暖な気候で知られる。気質的にも争いごとを好まないお人好しが多いとされる。だが清水、さらには磐田に地元出身の選手は少ない。これもまた問題ではないかと言いたくなるほどだ。

 清水はご承知の通り30年前、Jリーグが10チームでスタートしたときのオリジナルメンバーで、その1年後にJリーグに仲間入りした磐田も3度の優勝を誇る名門である。Jリーグ史を長年彩ってきた両チームが同時に降格することは、サッカーどころ静岡の凋落をも意味する、事件と言えば事件である。

 だが磐田は2014年、15年,20年、21年と過去9年で4度、J2で戦った経験がある事実上の"エレベーターチーム"である。清水も今回が2016年に続く2度目の降格だ。J1には1シーズンで復帰したが、再昇格後も14位、8位、12位、16位、14位と低迷。降格候補としての戦いを強いられ続けてきた。そして今季は17位と、ついに耐えきれずに、降格となった格好だ。

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