サンフレッチェ広島は負の呪縛から逃れられるか。天皇杯は6度目の挑戦も失敗、ルヴァンカップ決勝は過去2回いずれも逆転負け (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

ルヴァンカップも決勝に進出

 広島にも勝つチャンスはあった。同点に追いついてからの時間帯に、一気呵成に畳みかけられる流れがあった。ところが川村のゴールを演出した場面で、エゼキエウが負傷。交代枠を使いきっていた広島はアディショナルタイムを含めた残り12分間でリスクを冒さず、6人目の交代が可能な延長戦に勝負をかける道を選んだ。

 延長後半のPK失敗も、もちろん痛かった。堂々とキッカーに名乗り出たのは大卒ルーキーの満田誠だったが、この大舞台で重圧があったことは否定できないだろう。

「決めきれることができなかったのは、自分の実力不足。下に速いボールを蹴ろうとしたんですが、思ったよりボールに力が伝わらなかった......」

 最大のチャンスを逸した広島に、勝利の女神はどこまでも冷たかった。PK戦ではヒーローになるはずだった川村が、悲劇の主人公となってしまうのだ。

「PKに関しては、勝つか負けるかのところで、すべての運が甲府さんのほうに転がっていったと思います」

 指揮官が振り返ったように運にも見放された広島は、6度目の挑戦でも鬼門を突破することができなかった。

 もっとも幸いというべきか、広島は6日後に再びタイトルをかけた舞台に立つことができる。国立競技場でセレッソ大阪と対峙するルヴァンカップの決勝だ。

 ただ、こちらの大会でも過去に2度ファイナルに進みながら、タイトルを手にできていない。ともに逆転負けという勝負弱さを露呈しており、もうひとつの鬼門と言えるだろう。

 甲府戦の直後は「なかなか切り替えるのは難しい」と肩を落とす選手が大半だったが、時間は限られている。

「1週間後にまた決勝の舞台があるのは、幸せなこと。こんなに早く取り返せるチャンスがあるのは滅多にないと思うので、チーム全体で切り替えて、タイトルを獲りにいきたい」(野津田)

 長年つきまとうカップ戦シルバーコレクターのレッテルを、今度こそはがすことはできるのか。涙を流したふたりの若手が新たな歴史を作ることになれば、この天皇杯の敗戦も、壮大なフラグとなるはずだ。

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