元レフェリー・家本政明が明かすJリーグですごかった担当試合。「胃がキリキリする緊張感」を感じた一戦とは? (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

自らレフェリング基準の舵を切った試合

2019年2月16日/FUJI XEROX SUPER CUP 2019 
川崎フロンターレ 1-0 浦和レッズ

 2019年のゼロックス・スーパカップは、私にとって非常に大切で、思い出深く、ひとつのきっかけとなった試合です。

 毎年行なわれるスーパーカップは、いよいよシーズンが開幕する前のお祭り的な試合である一方で、そのシーズンのレフェリングの基準を示す意味合いを持つ試合になっています。

 毎年1月末になると、レフェリーは全体の研修会を行なうのが通例となっています。そこでは新しいレフェリングの基準の詳細を勉強したり、ディスカッションしたり、確認が行なわれます。それを経て、レフェリーは各クラブのキャンプへと赴き、指導者や選手たちとディスカッションや確認。質疑応答などで、新しいレフェリングのすり合わせをし、練習試合で実技テストのような形で調整をしていきます。

 そしてシーズン開幕前の最終的なチェック、総仕上げがスーパーカップになるわけです。これはそうした傾向にあるという話ではなく、アセッサーのチェックが入り、レフェリー側のシステムとしてそういう位置づけとなっています。ですからメディアやサポーターの方々はもちろん、レフェリーとしても注目度の高い試合なのです。

 ただ、それゆえ、スーパーカップは荒れがちで難しいと言われています。それはレフェリー側がお祭りとか、イベント的な要素を考慮することなく、とにかく「しっかり、きっちり、はっきりと判定基準を全体に示す」ことがレフェリーに強く求められている試合なんです。私が2008年に鹿島アントラーズ対サンフレッチェ広島の試合を担当し、大きく荒れて問題になったこともありました。

 私はこの基準を示すことに注意が向きすぎて、年々その傾向が強くなる点に違和感を覚えていました。もっとJリーグの開幕にふさわしく、お祭り的で、フットボールを純粋に楽しめるイベントに変えなければいけないと思っていました。そうした流れを変えるきっかけになったのが、2008年以来の担当になった2019年のスーパーカップなのです。

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