清水エスパルス復調の立役者・山原怜音は、澤登正朗を彷彿とさせる現在Jリーグ最高の左SB (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

なぜ日本代表に招集しないのか

 清水でキックの名手と言えば、澤登正朗を思い出す。その昔、日本代表合宿を取材した時、FKの練習で誰よりも枠の隅を捉えていたキッカーが澤登だった。コントロールショットに関して、彼は当時、日本一の精度を誇っていた。そのフォームに山原は似ている。

山原には澤登を彷彿とさせるコントロールショットに加え、パンチ力もある。170センチの澤登より6センチ低い164センチの小柄な選手であるにもかかわらずだ。さらに言えば馬力もある。スピードもある。

 ドリブルにも長けている。右利きの左SBなのに縦に強い。深々とゴールライン際まで侵入し、左足で折り返す。それが自然にできる。身体の向きを変え、ステップを踏みながら縦抜けを図る。その成功率の高さに魅力を覚える。浦和戦では、日本代表の有力なスタメン候補選手である酒井宏樹にも、縦抜けの勝負で勝っていた。

 柏戦では、サイドではなく中央をドリブルで突き、GKに近距離から直撃シュートを浴びせている。乾からリターンパスを受けるとスラロームのようなドリブルで、ひらりひらりと計3人かわし、左足を振り抜いたのだ。

 キック、ドリブル、そしてもうひとつ長所を挙げるならば、中盤的なセンスだ。周囲との切れ味鋭いインサイドキックをまじえながら、状況をうかがうゲームメーカー的な賢さがある。清水で言うならば、守備的MF松岡大起と絡むと、プレーのレベルがグッと上がる。日本人のよさとは何かを見るようなリズム感が生まれる。

 森保一日本代表監督は、国内組で臨んだ東アジアE-1選手権にさえ、山原を招集していない。使ってみたいと思わないのだろうか。とりわけ大柄なドイツ人が嫌がりそうな選手である。小兵の魅力がたっぷり凝縮された左SB。長友佑都がその旗手だった時代は終わりを告げていると、森保監督には気付いてほしいものである。

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