浦和レッズにACLで千載一遇のチャンス。前線2人の多彩な関係はJリーグ随一だ (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

魅力的な小泉佳穂・松尾佑介のコンビ

 後半が始まるとパトゥムが盛り返す。好感度の高いサッカーを再度、タイのアウェーチームは披露。試合そのものはそうした意味で面白かった。4-0という結果を聞けば、緊張感に欠ける試合内容を連想するが、この間にパトゥムが1点でも返していれば、試合はもつれた可能性がある。

 浦和に3点目が生まれたのはパトゥムが前向きになりすぎた瞬間だった。後半20分、その強引とも言える縦パスをMF伊藤敦樹がカット。その足で持ち上がり、1トップ下で構える小泉佳穂へのラストパスとしたのである。試合が決まった瞬間だった。

 今季前半、引き分けが多く、勝ち点が伸びずに下位を彷徨っていた浦和だが、この日が訪れることは何となく予想できた。日本代表級の選手は酒井宏樹ひとりにとどまるが、それに次ぐ選手がどこよりも多くいるチーム。監督(リカルド・ロドリゲス)の采配もあるレベルに達している。平均点の高いチームだと認識していた。

 なかでも最近の好調を語る時、外せない選手が松尾で、ウインガーの彼を1トップで起用する監督のアイデアが、奏功しているように見える。もう少し言うならば、1トップ下で構える小泉とのコントラストに新鮮なインパクトを感じる。

 身長は松尾が170センチで、小泉が172センチである。一方の売りがスピード感あふれるドリブルで、もう一方は球持ちのいい技巧派だ。両小兵のこの緩急に相手チームは幻惑されている。ありそうでなさそうなコンビなのだ。

 昨季、リカルド・ロドリゲス監督は、小泉と、シーズン途中、柏レイソルから獲得した江坂任を同様な格好で並べている。ストライカーではなく、長年トップ下周辺でプレーしてきた江坂を0トップ気味に据え、小泉と前線でコンビを組ませ、こちらを感激させたものだ。だが、松尾・小泉も負けていない。松尾はウインガーとしてよりもよく見えるから不思議だ。褒めすぎを承知で言えば、マイケル・オーウェンである。

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