横浜FMの好調を支える屋台骨・岩田智輝。守備のオールラウンダーは日本代表にも必要だ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 浦和レッズのCB犬飼智也が、第6節の北海道コンサドーレ札幌戦で見せた前方へのフィードは秀逸だった。最終ラインから中盤の柴戸海に出した中距離の縦パスである。素早いキックモーション。グラウンダーの滑りのいい球質。寸分の狂いもない精度。日本人のCB史上最高と言っても過言ではない縦パスだ。

 パスを受けた柴戸はそのままスムーズにドリブルを開始。前線のダヴィド・モーベルグへ決定的なラストパスを供給した。得点は決まらなかったが、拍手喝采を送りたくなるプレーとはこのことである。

 犬飼のキックは、褒めすぎを承知で言えば、ベルント・シュスター、ウーリッヒ・シュティーリケ、シュテファン・エッフェンベルクといった、かつてのドイツ代表ゲームメーカーを彷彿とさせる絵になるフォームだった。シュティーリケではないけれど、その瞬間の犬飼は、司令塔色の強い中盤選手が、リベロに下がってプレーしているかのように優雅だった。

 だが犬飼は終盤、ケガを負い退場。全治6カ月と診断された。今季、鹿島アントラーズから浦和入り。スタメンの座を掴んだと思ったらこの有様だ。運がないにもほどがある。

 一方、鹿島は犬飼の抜けた穴に苦しんでいる。東京五輪に出場したU-24代表の町田浩樹もユニオン・サン=ジロワーズに移籍したため、CBは手薄になった。

 第8節の鹿島対横浜F・マリノス戦。CBの一角には、昨季まで守備的MFとして活躍してきた三竿健斗が入った。そこで、守備的MFよりCBのほうがさらなる飛躍が見込めそうな、日本代表復帰もあり得るのではないかと思わせる充実したプレーを見せた。もしこの試合で鹿島が勝利を収めたなら、三竿はアタッカーとして獅子奮迅のプレーを見せた鈴木優磨と並び、有力なMVP候補だっただろう。

横浜F・マリノスのCB、守備的MFとしてプレーする岩田智輝横浜F・マリノスのCB、守備的MFとしてプレーする岩田智輝この記事に関連する写真を見る だが試合は0-3。鹿島は終盤、横浜FMにたて続けに3ゴールを奪われ完敗した。個人的にはサッカーの質の違いがスコアに直結したと見ているが、それはともかく、勝利した横浜FMの、その屋台骨を支えているのは誰かと思いを巡らしたとき、浮上するのが岩田智輝と小池龍太になる。

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