12年間一緒。中村憲剛のアドバイス力に登里享平が最も感銘を受けた点 (3ページ目)
「いつだったか、SBをやるようになってから、立ち位置はベストなところにいるって憲剛さんに言ってもらえたことがあったんです。でも、自分としては、そこからボールをもらいに行った時に、パスを引き出したり、もらっても前を向けなかったりしていたんですよね」
中村のアドバイスで、登里は意識や思考が変わったという 課題であり、悩みが中村にはわかっていたのだろう。ある時、登里はこうアドバイスを送られた。
「自分のプレーを逆算したらいいと思うよ」
そこから意識も変われば、思考も変わった。
「ただ、憲剛さんが本当にすごいと思うのは、アドバイスはたくさんくれるんですけど、いつも答えは言わない。ヒントを与えてくれるだけなんですよね。それを自分で噛み砕いて、考えて、実践していくからこそ、できた時の達成感や充実感を自分が得られる」
J1優勝を決めた第29節のG大阪戦。22分に、登里が左サイドでパスを受けて、レアンドロ・ダミアンに鋭いクロスを供給できたのも、自分の立ち位置を考え、プレーを逆算していたからこそ生まれた先制点だった。
「自分がボールを受けたい位置に最初からいるのではなく、自分がそこで受けたいからこそ我慢して寄りすぎずにスペースをつくっておく。パスを引き出すってそういうことなんだなって、何度も自分で考えて、トライしてわかった。自分が今、SBとしてやっていけるのも、憲剛さんがいたからなんです」
具体的な指示を言えば、簡単だ。チーム最年長であり、戦術眼に長けた中村のアドバイスならば、ほとんどの選手がそのとおりに動くだろう。ただ、それではチームメイトのためにはならないし、先につながらない。だから、答えには自分で辿り着かなければならない――。
「あれだけ経験のある選手ならば、こうやれ、こうしろって言ったほうが早いと思うんですよね。でも、あの人はいつも自分で考えさせるんです。今のフロンターレに自立している選手が多いのは、そうした憲剛さんのアドバイスの仕方があって、それを僕らも見本としてマネをしてきたのもあるんじゃないかなって思います」
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