高円宮杯U-18リーグとバレロンに想う「サッカーは人生そのもの」 (3ページ目)
バレロンは10代のときに、父と兄を立て続けに交通事故で失っている。もうひとりの兄は、暴力的タックルで選手生命が絶たれた。彼はその不運を目の当たりにした。
「ピッチで楽しみ続ける。次の試合はもっと、もっとね。それだけさ」
そう語るバレロンは、弱いどころか、果てしなく強かった。
デポルティボ・ラ・コルーニャ時代にはラ・リーガ、スペイン国王杯で優勝。チャンピオンズリーグではACミラン、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・ユナイテッドを次々に破る立役者になっている。そして引退前に故郷ラス・パルマスに戻ると、最終節の試合終了間際に昇格を逃す悲劇に遭うも、次のシーズンに昇格をもぎ取っている。
その粘りは彼の人生であり、フットボールそのものだった。
おそらく選手育成では、この性格が一流になる、こうすれば一流になる、というメソッドは存在しない。フットボールは人生と同じで、危うく、先が見えないものだ。恵まれない状況のほうが、サッカー選手として成長できる側面もある。環境に恵まれていない南米からのほうが、いまだにうまい選手が出ているのは事実だ。そんな矛盾をはらんでいるのが、フットボールというスポーツなのだ。
どれだけボールを蹴ることに打ち込めるか――。それはひとつの才能だろう。その熱によって、選手としての一線を越えられる。どんな状況をも打破できる人間になれるのだ。
小机のスタンドからは、強風の中で試合を戦い終えた両者に、惜しみない拍手が送られていた。
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