たとえ裏切り者と言われても...。齋藤学がライバル川崎Fに移籍した理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by AFLO


 ギリギリの勝負をしてきた"報酬"だったのだろう。ロンドン五輪もブラジルワールドカップも、最後の最後でメンバーに滑り込んでいる。

 2017年シーズンに横浜F・マリノスでキャプテンを引き受けたときも、「重圧になるのではないか」という声に対し、敢然と言い放った。

「前のシーズンと同じ(環境)だったら意味がない。苦しいのを乗り越えてこそ、強くなれる。自分が大きくなるひとつのチャンスだと捉えています」

 そして下馬評は低かったチームを牽引し、シーズン途中から反転攻勢に転じた。

「まだまだです」

 彼はどれだけ活躍しても、むしろ活躍すればするほど、飽くなき欲求をたぎらせていた。キャプテンとして若手選手に積極的に声をかけ、フォア・ザ・チームに徹するようになった。一方で、ゴールが生まれないことに自らを叱咤した。

「足りないことばかり。ボールを失うし、仕掛けるのも足りない。全然、足りないです。点を獲れていないのは何か理由があるんです。そこを追求しますよ」

 齋藤は自らを追い込むように言い、決して状況から逃げなかった。少しの言い訳も口にしていない。真面目すぎるほどすべてを背負い、8月には優勝争いに加わった。

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